シンガポールで、
巨大病院建設プロジェクトを成功へ導け。
五洋建設の海外建築で最大規模の病院建設。
その大規模工事にかける思いを、現場最前線で指揮を執る工事所長が語った。
伊原 成章Nariaki Ihara
1991年入社/理工学部 建築学科 卒
入社初年度からシンガポール営業所に配属。3年間後に帰国してから、建築本部設計部やビルの新築工事などを経験。1997年より再びシンガポールで勤務。シンガポールの象徴的な建物である大型劇場・コンサートホールや、美術館、総合病院、商業施設などの工事に従事する。
『LRT(Light Rail Transit)』の駅を降りると、東京ドームがすっぽり入るほどの広大な敷地が広がっている。ここに建設される総合病院は、専門医クリニック棟、総合病院棟および地域病院棟の3棟で構成され、病床数は1400床を備えるシンガポール最大規模の病院である。
「受注に向けてプロジェクトメンバー全員で頑張ってきました。受注の連絡を受けたときはとても嬉しかったです。でも同時に責任の重さもずしりと感じました。」
工事所長を務める伊原成章は、こういって表情を引き締めた。日本円に換算すると1000億近くにもなるこの病院建設は、五洋建設の海外建築工事で最大規模となるもの。彼がそう感じるのも無理はないだろう。
シンガポールは今、日本と同じように少子高齢化問題を抱えている。政府の資料によると出生率は日本を下回り、2030年には65歳以上の人口が総人口の18%を超えるという予測もある。このスピードは日本を上回る早さだ。そこでシンガポールでは2020年までに病床数を3700床、医療従事者も50%増やすなど、病院の拡充や医療の質の維持・向上がはかられている。
伊原は語る―
「シンガポール営業所は、2000年代後半から商業施設だけでなく、病院建設プロジェクトにも力を入れてきました。実績も着実に上げつつあり、2010年に2つの大型総合病院を、2012年にも総合病院の建設工事を受注し、それぞれ無事に竣工を迎えています。病院建築の分野でさらなら実績を積むためにも、このプロジェクトを成功させて、発注者の信頼を揺るぎないものにするのは非常に重要なことだと認識しています。」
病院建設予定地のすぐわきを走るLRT。地域住民の足となっており、利用客は少なくない。工事を進める上で安全面への細心の注意が求められる。
工事の工程を細分化したガントチャートで常にスケージュールを共有。
シンガポールでは、工事の入札は価格と技術の総合力で評価して落札企業を決定する総合評価方式が採用されている。伊原をリーダーとしたプロジェクトメンバーは、入札書類を提出するまで3カ月しかない中、メンバーの力量や得意分野を加味しそろえられた。プロジェクトが動き出した当初から適材適所を実践することで、工事における課題の洗い出しと解決策、コストの割り出しに神経を注げる体制を整えたのだった。競争力のある価格をはじき出すため、メンバー同士で意見をぶつけ合うこともしばしばあった。
「そこまでしても心の中では、他社との厳しい受注競争になるだろうと思っていました。だから、受注決定の連絡を受けたときは喜びと同時に驚きもありました。」
病院の建設は、医療機器に対応した配線、排水設備や搬入時期、搬入ルートなど、独特なノウハウが必要となるため、このような実績は次の機会を後押しすること間違いない。
入札書類を提出するまで3カ月しかない中、幾度も計画の再検討が繰り返された。
海外での案件は、独特なルートやノウハウが必要となるため、現地スタッフの力が非常に重要となる。
「受注は私たちにとって最初のハードルに過ぎません。本番はここからです。」
伊原がこう語るように、工事は始まったばかりだ。これからさまざまな課題や難題が立ちふさがってくる。建設現場のすぐ目の前には列車が走っている。工事中だからといって運行を止めるわけにはいかないため、駅を利用する大勢の人たちの安全を確保した工事計画が要求される。そのため、建設機械の配置などに制限がかかっている。また、空港が近くにあるため、高さ制限が設けられておりタワークレーンの使用にも制約がある。夜間作業も禁止されているため、工期管理はシビアになる。加えて衛生管理も不可欠だ。シンガポールでは工事現場に蚊がわくことを防ぐために、水たまりの発生を極力抑えなければならず、できてしまった場合も殺虫剤をまくなど対処しなければならないなど、独特のオペレーションが要求される。
「いくつもの困難が想定できます。当然、入札の時点でそれらの課題に対して対応策を考えてありますが、現場は生き物であり何が起こるか分かりません。これだけ規模の大きな現場は初めなので、予想外の事態が起こらないとも限りません。たとえ小さなミスであっても挽回の機会を逸すると、リカバリーするのは容易ではないでしょう。」
今後工事が進んでいけば、人員も増やしていかなければならず、プロジェクトがスタートしたときと同様、適材適所の人材を集め続けることができるかということも、大きな課題の一つになってくる。
しかし、伊原は、どこかしら楽しそうに見える。「組織としての目標を明確にして、スタッフ全員で同じ目標に向かうことができれば、必ず目標は達成できる。」ということを、多くの建設工事に携わってきた経験からわかっているからだろうか。
「それもあります。でも、建物を建てることへの情熱がなければ、タフなこの仕事を乗り切ることはできません。要するに、好きなんです、この仕事が。」
そのときの笑顔が、一番印象的だった。
度重なる課題や難題をクリアするために、適材適所に人員を配備することも重要となる。
現地のプロジェクト・マネージャーのジョン・コーが、五洋建設や、活躍できる人材論について熱く語っています。(動画 2:40秒)
※内容はすべて取材当時のものです。
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