建設業界と五洋建設の未来
Future of the construction industry and the company
建設業界は国内外での受注活況の一方で、競争激化や収益確保の難しさなど、取り巻く問題も多いと思います。今後の建設業の展望について、どのように考えていますか?
2014年6月社長就任以来、建設業を取り巻く事業環境は、アベノミクスの推進により官民ともに堅調な建設投資に加え、東日本大震災からの復興、東京オリンピック・パラリンピック関連やインバウンド関連の需要増加等、良好に推移しました。
しかしながら、2020年に入り、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化により、国内外の社会、経済情勢は先行き不透明な状況にあります。短期的にはその影響は避けられませんが、中長期的には国内外の建設投資は回復すると考えています。国内においては、国土強靭化をはじめ経済を支えるインフラ整備に関する高水準の公共投資が、また、需要の旺盛な交通、物流関連や都市再開発などの民間投資が持続するものと考えています。海外においても、当社の拠点であるシンガポール、香港をはじめ、東南アジアやアフリカでインフラ需要は旺盛です。また新しい分野として、我が国の洋上風力発電施設の建設もいよいよ本格化します。これまで培ってきた海洋土木技術を生かして進取の精神で取り組みます。
これから5年、10年先の建設業界において、五洋建設はどのような優位性を発揮し、どのような企業へと成長していくのでしょうか?また、それを成し遂げるための課題は何ですか?
わが社の強みは、その生い立ちから臨海部にあります。海の土木工事だけでなく、埋立地のインフラ整備、物流・倉庫などの建築工事に強みを発揮してきました。
当社は、臨海部と海外に強みを持つ真のグローバルゼネラルコントラクターを目指しています。真のグローバルゼネコンとは、一つは土木・建築、国内・海外の垣根がなく部門間連携が当たり前の会社です。海外の大学では建設工学に土木と建築の区別はありません。もう一つは、単なる多様性(Diversity)ではなく、国籍・性別によらず多様な人材がお互いを認め合って生き生きと働けるD&I(Diversity & Inclusion)が当たり前の会社です。
その実現のため、①働き方改革と生産性向上の先進企業、②D&I(Diversity and Inclusion)の先進企業、③進取の精神で新しいことに挑戦する企業、④ESG(E:環境、S:社会、G:企業統治)重視のCSR経営の実践を目指します。その結果として、お客様にとって、社会にとって良質な社会インフラや建築物を確かな安全と品質で提供したいと考えています。
新型コロナ感染症にはどのように対応していますか?
ウィズコロナにあっても三密回避等の感染防止対策を強化・徹底した上で工事を継続することが、インフラの建設と保守を担う建設業の社会的使命であると考えています。感染防止対策の徹底は、工事安全と同様、現場の最優先課題として取り組んでいます。ソーシャルディスタンスを意識した新しい働き方への転換には、人と人の接触を減らし、省人化、遠隔化が求められます。現場にあっては、ICTの活用やBIM/CIMの活用の推進、プレキャスト化等、生産性向上の取組みを加速するとともに、本支店にあっても密にならないオフィス環境の整備、テレワーク、ウェブ会議の日常化を推進します。ウィズコロナは、働き方改革とそれを実現するための生産性向上を加速する絶好のチャンスです。
今後、五洋建設で重点的に投資を進める対象はどのような分野でしょうか?
重点的に投資する分野は、我が国でいよいよ本格化する洋上風力発電建設分野であり、そのトップランナーを目指します。洋上風力発電施設の建設に不可欠なSEP型多目的起重機船の建造(2019年度完成の800t吊クレーンを搭載したCP-8001、現在建造中の1,600t吊クレーンを搭載したCP-16001など)、必要な作業船や機器の設備投資を重点的に進めます。
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のための基盤整備や、ICT・AIを活用した現場の施工管理の効率化・高度化やBIM/CIMの活用推進、プレキャスト化等の現場の生産性向上に関わる技術開発や現場への展開を積極的に進めます。
さらには、ZEB(Zero Energy Building)や建設発生土・浚渫土リサイクル等、環境分野の技術開発と実プロジェクトでの積極的な適用を推進します。今後も競争力強化のために必要な技術開発や設備投資をしっかりとやるつもりです。
五洋建設で働くことの面白さや醍醐味はどういったところとお考えですか?
臨海部と海外に強みを持つ真のグローバル・ゼネラルコントラクターを目指すという明確なビジョンのもと、他社にない特徴を持った会社として将来を見据えて仕事に取り組むことができるのがわが社の面白さではないでしょうか。われわれの技術力を発揮することでお客様に信頼され、社会に貢献できることです。社員の皆さんが働き甲斐のある会社にしたいと考えています。