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西部臨海ポンプ場工事では、工事で発生した掘削土を高い品質管理を行いながら、均一で強度のあるセメントに再生し、地中連壁として再利用する「ソイルセメント連続工法」を採用している。まさに3R(リデュース・リユース・リサイクル)を実現した、環境にやさしい工事である。
今回は当現場の背景から施工の技術まで、数々のドラマを紹介する。
位置図
「穏やかで風光明媚な内海」というイメージが強い瀬戸内海。しかし、秋は高潮や台風が猛威をふるい、沿岸部に水害をもたらすことも少なくない。広島市西区、広島湾に臨む商工センター地区も平成16年の台風18号で多大な被害を受けた。
同地区は、広島市が昭和47年度より西部開発事業として埋立造成した区域にある。地区内の雨水は、地下の雨水管を通り、センター内を流れる井口川と護岸2ヶ所から海に自然排水されてきた。しかし、地盤沈下がかなり進んでおり、台風シーズンには浸水を招きやすい状況となっている。そこで、地区内からの強い要望に応える形で、広島市は「商工センター地域災害対策整備計画」を策定。既存の護岸の海側に新たな護岸を設けて、高潮対策を図った。
それに並行し、浸水対策として平成14年より進められてきているのが、五洋JVが手掛ける西部臨海ポンプ場建設工事である。
エリア面積328haの商工センター地区内には、企業約500社の拠点がある。災害からその安全を守るために、地上15m・地下24m、延床面積が1,624m2の、巨大ポンプ場建設事が、平成19年3月竣工、平成20年度の稼働を目指して着実に進められている。
西部臨海ポンプ場は、ポンプ棟、沈砂池、放流渠で構成される。商工センター地区全域の雨水を、まずポンプ棟の地下に集約。それを5台のポンプにより汲み上げ、沈砂池へ送る。湾内の環境保護のために沈砂池で砂を落とした雨水は、放流渠を通って広島湾へ流される。1秒間に30トンもの雨水を処理することのできる性能を持つポンプ場である。広島市ではこの地域以外でもポンプ場の建設が進められているが、現時点ではこの西部臨海ポンプ場が市内最大規模の施設となる。
大量の雨水を集約するために、ポンプ棟の地下部分については掘削面積約1,651m2(タテ45m×ヨコ36.7m)、深さ23.8mの大深度掘削が必要とされた。そこで工事所長には、これまで豊かな陸上土木の経験を持つ木村博之が着任。その右腕として、首都圏で大深度掘削などを担当してきた長島秀樹が工事所長代理に就いた。
ポンプ棟への地下雨水流入ポイントとなる「流入特殊人孔」と完成予想図
平成16年台風18号による現場被害状況
湾岸での大深度掘削には、内陸部での工事にない危険が潜んでいる。「2006年のゴールデンウィークの頃、ポンプ棟の地下20mの地点で流入特殊人孔の狸堀りを行ったのですが、わずか2m掘るのも漏水がないか確認しながら慎重に進めました。海中と同じ深さの場所ですから、万一、穴が開いて海水が入ってくるようなことがあれば、地域一帯が陥没するような大事故にもつながりかねません。二重三重の安全対策を心掛けました」と長島。スペシャリストの経験と知識が十分に活かされ、高次元の安全を確保しながら巨大ポンプ場は完成に向かっている。