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What's New
種子からのアマモ場造成に新たな種まき材料を開発
〜実海域実験での発芽で有効性を確認〜
2005年06月07日
五洋建設株式会社(社長:鉄村和二郎)は、種子からアマモ場を造成するために、海の波や流れの中でアマモの種子や発芽したばかりの発芽体が流失してしまうことを防ぐ「粘土を利用したアマモの播種(種まき)材料」を開発、このほど実海域の実証実験で種子の発芽を確認しました。今後は播種材料と種子を選定場所に効率よく設置するための施工方法について検討を進めてまいります。
沿岸の浅い場所で海草や海藻の密生しているところは藻場と呼ばれ、海の生態系や水産資源の保護・増殖のために大きな役割を担っています。多くの藻場は沿岸の開発適地の近くに分布していたため、開発や汚染などによって多くが消滅してしまっています。しかし、近年の環境問題に対する関心の高まりとともに、藻場造成技術の開発が要請されています。
藻場にはその分布場所や海草、海藻によっていくつかの種類がありますが、遠浅海岸や干潟前面など沿岸の波の穏やかな砂泥域に分布するアマモ類の海草域はアマモ場といわれています。アマモ場造成方法には移植による造成や種子からの造成があり、このうち種子による造成は移植元の株の減少がないため、既存のアマモ場へのインパクトが少ない工法として近年注目を浴びています。
これには直接海底に播く方法や種子を埋め込んだシートやマットを海底に敷設する方法などが挙げられますが、直播による方法だと波や流れによって種子が流失しやすいという課題があります。また、近年港湾などで浚渫された粘性土の受け入れ先が不足している問題もあり、リサイクル活用の有効な提案も望まれていました。
播種材料
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当社が開発したアマモの播種(種まき)材料は、種子からアマモ場造成を果たすための上記課題を克服する技術で、海成粘土に中性固化材、ポリマーを配合して大きい粒状の材料を作成し、アマモ場造成対象地に設置することで波や流れなど外力に対する移動抵抗力を増大させ、種子を安定させる方法です。種子と同じく抵抗力の弱い発芽したばかりの発芽体の流失も防ぐことも可能です。また、播種材料は粘土で作成されるため、市販粘土のみならず浚渫粘土をリサイクル材として播種材料に使用することも可能で、循環型社会への寄与を期待できます。開発した播種材料の海底設置にあたっては機械化施工が可能で、ダイバーによる潜水作業を省略できるため、大規模なアマモ場造成を効率良く安全に行なうことができます。
当社は2003年9月から播種(種まき)材料の開発に着手し、2004年度には室内実験による種子の発芽確認のほか、独立行政法人産業技術総合研究所(理事長:吉川弘之、東京都千代田区)と広島県・三津口湾で共同実証実験を行ない、発芽による播種材料の有効性を確認しています。
現地実証実験で確認した発芽の様子
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当社はこれまで約15年の年月をかけアマモ場造成の技術開発に取り組んできており、その成果である「アマモ場造成適地の選定技術」と既存のアマモ場を効率的に移植する「アマモ場機械移植技術」を実適用しています。今回、技術メニューのラインアップに「播種(種まき)材料によるアマモ場造成」を加えたことで、これからは3本柱の技術でアマモ場造成事業に対応することが可能になります。今後は、当社開発済みの海底面覆砂工法などを適用した播種材料設置の施工方法検討を進め、実適用を目指してまいります。