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ヒルトン広島 ― 広島の新たなランドマークを創る ―
ヒルトンにとって中国・四国地方初進出となる「ヒルトン広島」が2022年10月22日にグランドオープンした。平和大通りに近接し、世界遺産の原爆ドームや広島駅へのアクセスも容易で、建物からは広島の街や瀬戸内海などの景色も楽しめる。420室の客室に加え、国際会議等のMICE※にも対応する大規模ボールルームやレストラン、フィットネスなどフルサービスホテルの機能を有したグローバルホテルは観光客のみならず地域の人々にも利用され、豊かな時間とホスピタリティ溢れる空間を提供する。中国・四国地方の中枢を担う広島市の都市機能の強化だけでなく、豊かな観光資源とともに更なる地域経済の発展が期待される。
※MICE:企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字。多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称
伝統とモダンが融合したデザインと充実したフルサービス機能
ホテルの外観は、広島や瀬戸内海の歴史や文化からインスピレーションを受けた格子や庇、デザインウォールが建物全体を引き締め、夜間のライトアップが広島の夜景に華やかさを添える。また内部空間は自然や伝統工芸の要素を織り込んだディテールと各所に配置されたアートが訪れたゲストに美しい情景を体感させる。インターナショナルブランドであるヒルトン&リゾートのサービスに、歴史と文化を取り入た洗練されたデザインが融合し、建物全体が形作られている。
- 外観ライトアップ
- ロビーラウンジ
2階にある広島市初の大規模ボールルームは平面形状約50mx26m、天井高さ約7mの無柱空間となっており、1千人以上の収容が可能で様々な会議・イベントに対応する。3階には中・小会議室、4階にチャペル、5階に屋内プールやフィットネス、スパ、6階にはオールデイダイニングを含むレストラン・バーが配置されている。19〜22階はエグゼクティブフロアとなっており、宿泊ゲストは広島市内や瀬戸内海を望める22階のエグゼクティブラウンジで、ひと味違う空間を愉しめる。
- ボールルーム
- エグゼクティブラウンジ
高層部と低層部の同時施工
本計画地は旧警察署と民間建物の跡地で、民間建物側は地下躯体が残されていた。本体工事に影響する杭や基礎は先行して撤去したが、地下外壁は部分的に残置し仮設山留壁として有効活用した。地下階はなく基礎と配管ピットのみであったものの計画地が太田川三角州に位置していたことから地下水位は高いことが分かっていた。そこで山留工事はSMW工法の採用とディープウェルを併用することで掘削から基礎工事まで地下水の影響を受けることなく工程通り工事を進めることができた。
建物外郭が境界際まで迫っていたため、基礎から1階床までの構築は仮設構台を活用した。SMW芯材サイズや基礎底レベルを浅くする検討を地道に行い、施工の効率化に注力した。
地上躯体工事の計画は、敷地内での作業スペースの確保が課題であった。そこで低層棟の一部を“あと施工”とし、高層棟の鉄骨工事と外装PCa板の地組・作業ヤードに活用した。高層棟は500t-mのタワークレーン2基、低層棟は70tラフタークレーンで施工を進め、双方の作業範囲が干渉しない施工計画とした。
高層部の鉄骨建方は1フロアを2工区に分割し、客室階がはじまる7階から1節3フロアを 10日サイクルで進めた。上棟前には外装PCaの据え付けも並行して開始し、内装仕上げ工事の早期着手を図った。また、タワークレーン1基は高層棟の客室窓から支持材を取り建物外部に設置することで、”あと施工”範囲の縮小とクレーン解体の工期短縮およびコスト削減を行った。
省力化や生産性向上の取り組みでは、五洋建設グループのジャイワット株式会社が製造する泥土改質材「ワトル」の活用による効率的な杭残土の処理をはじめ、基礎工事ではコンクリート打設に先行して埋め戻すことが出来る鋼製型枠の採用や、BIMを活用した施工管理システムPiCOMS-S※への外装PCa工事の進捗管理の追加のほか、職長に貸与したiPadを活用した現場運営、施工図BIMなどが挙げられる。BIMは、躯体図や平面詳細図の作成以外にも、設計者やヒルトン担当者との外観デザインの合意形成や、客室からの眺望の確認に活用した。
また、近隣対策として、デジタルサイネージにQRコードを表示することで、近隣の方々が最新の情報を入手しやすい環境を整えた。
工事期間の大半が新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受ける中、職員と協力業者が一体となって当初の計画通り完成させることができた。
※PiCOMS-S:BIMモデルを活用して建築工事を統括管理する「五洋建設統合施工管理システム」(PiCOMS(ピーコムス):Penta-Ocean Integrated Construction Management System)の鉄骨工事版
高層棟外部に立つタワークレーン
左/高層棟外部に立つタワークレーン 右/客室窓の開口部を活用したクレーンの支持材
- 外装PCaの進捗管理を取り込んだPiCOMS-S
- 高層棟の鉄骨建方
所長インタビュー
森山 茂幸 特定工事所長
〜働きやすさを求めて〜
広島の新たなランドマークとなるヒルトンホテルを創りあげるには、このプロジェクトに関わる人々がその完成イメージを常に共有することが重要と考え、工事事務所の壁にデザインパースやコンセプトを掲示したり、コンセプトカラーのクロスを内装や事務机に施すなど視覚的な工夫を凝らしました。コミュニケーションにおいては海外工事の経験が豊富な技術者を配置し、ホテル側の要求にもきめ細かい対応を行いました。デザイン事務所の推奨品は海外製品が多数ありましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による納期遅延リスクを考えて、国内製品への転換を図ることで影響を最小限に抑えることができました。プロジェクトメンバーの約3割を占める女性技術者が、けんせつ小町「こまちじゃけえ」を結成し、大いに活躍しました。
オープニングセレモニーでは岸田首相のビデオメッセージをいただくなど多くの人に喜ばれる建築物を、関係者の皆様の協力により完成することができました。
工事名称 | (仮称)広島市中区富士見町地区フルサービスホテル建設工事 | |
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引渡し建物名 | ヒルトン広島 | |
工事場所 | 広島県広島市中区富士見町11-12 | |
工期 | 2020年2月1日〜2022年4月30日 | |
発注者 | 富士見町開発合同会社 | |
設計者 | 浅井謙建築研究所(株) | |
施工者 | 五洋建設・増岡組特定共同企業体 | |
用途 | ホテル(客室420、ボールルーム、中・小会議室、チャペル、プール、スパ、フィットネス、レストラン・バー、ラウンジ) | |
工事概要 | 構造 | S造(一部CFT)、RC造 |
階数 | 地上22階、塔屋2階 | |
敷地面積 | 6,403.00m2 | |
建築面積 | 5,278.18m2 | |
延床面積 | 48,218.84m2 |