このページは、ホームソリューション・技術プロジェクトプロジェクトストーリーDCM山梨中央商品物流センター新築工事のページです。
現場位置図
当工事は、DCM(株)の新物流センター「DCM山梨中央商品物流センター」を山梨県中央市に、当社の設計・施工で建設したものである。
設計面では、高機能物流施設としての機能を最大限発揮するための建物計画の立案はもちろんのこと、中央市の要請を受けて自然豊かな風景に調和したデザインとすることにも配慮した。施工面では、数々の省力化工法を採用し生産性向上を図るとともに環境に配慮した施工をおこなった。床コンクリートのひび割れ低減など様々な工夫を重ねることで高品質な施設を実現した。
- エントランス
- 食堂
建物のデザインは、中央市都市計画課からの景観条例に基づいた指導をもとに、色彩・ボリューム感などを検討し、周囲の美しい環境との調和を意図して設計した。自然風景の持つ色彩のグラデーション、光の当たり方や角度よって変化する表情の多様性といった側面に着目し、外壁面はグリーンとグレーのサンドイッチパネルをランダム貼りした特徴的なデザインである。また、そのデザインコンセプトを外観デザインから内部のエントランスや食堂といったアクセントとなる空間のデザインへと連続させることで、施設全体で統一されたイメージとした。
「DCM山梨中央商品物流センター」は地上3階、延べ床面積約45,000uの建物内に各種マテハン設備*1を導入することにより、上下・水平搬送において時間的ロスの少ないスピーディーな入出荷オペレーションを実現した高機能物流施設である。高度な搬送フローを実現するための受け皿として、必要な有効高さや柱スパン・床荷重設定に応じた適切な構造計画を行うとともに、防火区画の一部免除による大空間を確保することで、汎用性の高さに加え、将来的なライン増設などの拡張を見据えた柔軟性の高い建物計画とした。また、避難安全検証法を用いた防災検証を行うとともに、BCP対策として非常用発電機を設置することで庫内作業者の安全確保、および非常時の事業継続に備えている。
*1物流業務を効率化させるために用いられる作業機械の総称。マテハンは、マテリアル・ハンドリングの略で、「製造に用いる材料、部品、半製品などの物品の移動、搬送、取付け、取出し、仕分けなどの作業及びこれに伴う作業」を指す。
ビッグファン
庫内作業者にとって良好な環境を創出するために、各スペースの作業特性に応じてエリア別に庫内空調を計画したほか、2階の一部に穏やかな気流を生み出す直径約6mの天井扇(ビックファン)を採用した。建物デザインの工夫と合わせて、施設利用者にとって、「ここで働きたい」というモチベーションの向上につながる快適な職場環境づくりを心掛けた。
ハイパーネット敷設状況
当工事の施工にあたって発注者からの要望事項のひとつとして、床コンクリートのひび割れ低減があり、発注者の要望に応えるため、さまざまな取り組みを行った。土間・スラブのコンクリートスランプを15cmから12cmへ低減させたほか、湿潤養生方法、打設エリア区分、打ち継ぎ処理の方法などを詳細に定めた施工計画を立案・実行した。また、スランプ低減による施工性への影響を確認するため、供給工場ごとに3.0m×3.0mの試験打設を実施した。配合から打設、鏝押え、湿潤養生まで行い、経過を観察してから本施工へ着手した。さらに、ひび割れ対策として、柱出隅部にはひび割れ補強筋に加えて耐アルカリ性ガラス繊維ネット(ハイパーネット)を敷設し引っ張り抵抗を高めることで、ひび割れを低減させた。
当工事では工期遵守のため、基礎部分の効率施工がカギだった。施工の効率化によって省力化・工期短縮だけでなく、残土搬出量の削減にも寄与し、環境配慮施工の実践につながった。
1.土工事・山留工事・杭工事の効率的な施工
土工事・山留工事・杭工事の施工フロー
(□内の数字は埋め戻しの順番)(画像拡大)
既存の調整池と新築計画の雨水貯留槽の位置が異なっていたため、既存調整池の埋め戻しと新設雨水貯留槽部の山留・掘削工事の施工に工夫が求められた。
まず、既存調整池の埋め戻し工事は、山留工事の進行を妨げることがないように、山留工事の施工範囲を優先して施工した。また、新設雨水貯留槽部の掘削工事や他エリアの杭工事を並行して施工し、そこで発生した掘削土を埋め戻し工事に転用した。盛土改良と掘削土のストックを計画的に行うことで基礎工事の効率的な施工を実現するとともに、建設発生土の場外搬出量を当初予定から大幅に削減することができた。
2.スーパーラップルエルニード工法の採用
スーパーラップルエルニード工法の施工状況
当初、基礎最深部がラップルコンクリート*2となっていたが、改良下端が付近の地下水位よりも低かったため、通常の施工方法では地下水の流入によって円滑な施工が妨げられる恐れがあった。
そこで、スーパーラップルエルニード工法を採用した。同工法は、改良体設置箇所の掘削によって発生する掘削土に、改良材と水を加えることで支持地盤上にブロック状の改良体を構築する工法だ。影響が懸念された地下水の流入という課題を払拭するとともに、通常のラップルコンクリートの施工では必要な型枠組立・コンクリート打設が必要なくなり施工の省力化に効果があった。また、掘削土を改良体の材料に利用するため掘削土の場外搬出量の削減にもつながった。
*2支持地盤上の軟弱地盤をコンクリートに置き換えることで、建物の重量を支持地盤で支えることが出来るようにする地盤改良の工法における改良体のコンクリート。
3.基礎躯体工事を省力化
大組みした基礎型枠の設置状況
雨水貯留槽部の基礎では、地上部での作業に比べて手間のかかるピット内部での作業を減らす工夫をすることで、基礎躯体工事全体の省力化を実現した。例として、配筋作業を省力化できる2線メッシュ筋を採用したこと、基礎型枠を組立ヤードで大組み後にクレーンでセットする方法を採用したことなどがあげられる。
また、ピットの深さが4.0mあるため、地中梁上筋圧接とコンクリート打設用に全てのピット内に足場を組む必要があったが、フェローデッキを仮敷きして作業足場として代用することで、足場の組み立て作業を省略できたと同時に、ピット下部での作業性を高め工期短縮につなげた。
- 基礎躯体の施工フロー(画像拡大)
- 作業足場として仮敷きしたフェローデッキ上での作業状況
所長インタビュー |
設計者インタビュー |
|
施工に携わった関係職員、協力会社の皆様の全員の力を結集して無事に竣工することができました。コンクリートのひび割れ低減については、コンクリートスランプ低減やハイパーネットの敷設などの様々な対策が功を奏し、品質の高い建物をご提供できたと感じています。また、施工の効率化・省力化の取組みも効果をあげ、円滑な施工と高品質な建物の提供につながりました。 | 山梨県中央市から「風景との調和を意図したデザイン」が求められ、それを具体化するため、外壁サンドイッチパネルのランダム貼りパターンの検討やカフェテリアのデザイン検討など、当社の若い設計者が知恵を出し合って取り組みました。 風景との調和を意図しつつ、さながら物流施設の最新技術展示場のような高機能物流施設の実現に貢献できたことをうれしく思います。 |
|
|
|
工事名称 | DCM山梨中央物流センター新築工事 | |
---|---|---|
引渡し建物名 | DCM山梨中央商品物流センター | |
工事場所 | 山梨県中央市浅利字川添841番1外98筆 | |
工期 | 2019年8月7日〜2020年10月30日 | |
発注者 | DCMホールディングス(株) | |
設計者 | 五洋建設(株) 本社一級建築士事務所 | |
施工者 | 五洋建設(株) | |
用途 | 物流センター | |
工事概要 | 構造 | S造 地上3階 |
敷地面積 | 38,156.68m2 | |
延床面積 | 45,223.35m2 | |
建築面積 | 21,772.07m2 |