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現場位置図
当工事は、横浜市のみなとみらい21新港地区において、 CIQ[Customs(税関)・Immigration(出入国審査)・Quarantine(検疫)を包括した略称]施設・商業施設・ホテルから構成される複合施設の新築工事である。2019年10月31日にオープンし、11月4日には新客船ターミナルとして供用開始した。
「2020年に訪日クルーズ旅客を500万人に」という国が掲げる目標のもと、官民連携による国際クルーズ拠点として横浜港が指定され、「YOKOHAMA HAMMERHEAD PROJECT」が推進されることとなった。
国内外の多くの観光客が集い、横浜市の更なる発展に貢献することが期待されている。
さらに、災害時の緊急物資の受け入れに配慮した施設であり、海上から緊急物資の受け入れを行い、地域の災害対応拠点としての機能も担う。
ハンマーヘッドクレーン
当施設のすぐ横に現存するこの「ハンマーヘッドクレーン」は、1914年に国内で初めて整備された英国製の港湾荷役専用クレーンで、横浜港の近代化に中心的な役割を担ってきた。
1970年代以降、港湾物流はコンテナ貨物が主体となり、流通の拡大に伴って本牧ふ頭、大黒ふ頭が整備され、2001年にハンマーヘッドクレーンはその役割を終えた。
この由緒ある遺構が、当客船ターミナルや商業施設を含む複合施設の名称である「YOKOHAMA HAMMERHEAD(ハンマーヘッド)」の由来にもなっている。
また、2018年には、クレーン荷役の先駆けとして、横浜港の礎を築いたとして土木学会選奨土木遺産に認定された。
この歴史ある風景を継承している新港ふ頭は、人々が楽しめるウォーターフロントとして再開発され、新たな文化や価値を生み出す横浜のシンボルとなる。
当工事の大きな特徴は、三方を海で囲まれていることである。
既存地盤から海面までが2mしかなく、試掘の段階では比較的浅いレベルで海水が湧き出した。
そのため、一般部の基礎はGL-2.0mが基礎底となるように設計されていたが、受水槽部等一部海水面より深いエリアもあり海水対策は必須であった。対策としては、シートパイルを全周に打設し、セクション部分に膨張型の止水剤を塗布し地下水と反応させ、外部からの水の流入を防ぐ工法を選択した。
また、シートパイル内に9か所のストレーナーを設置し、ディープウェル(深井戸)を設置することで地下水位を十分に低下させ、基礎工事の作業性を確保した。
震災ガレキ
また、もうひとつの特徴は地盤に関東大震災のガレキを埋め戻していることである。
試掘の段階でも大量のレンガが埋まっている状況を確認したが、掘削時には幅1〜2mの大きさのコンクリートガラが頻繁に出土し、想定以上の労力がかかった。このような環境の中で、地中障害が想定される深度まで地中障害の撤去を行い、杭の打設工程や性能に悪影響を及ぼさないよう、特に注意して品質管理を行った。
建物用途は、1階の約半分がCIQ施設、残りの半分と2階の約8割が食をテーマとした商業施設、3階から5階までがインターコンチネンタル横浜Pier8となっている。
特に、ホテルエリアに関しては横浜で一番高級なホテルにするというコンセプトのもと、仕上がりを追求した。
横浜港を一望できる「ベイビュー」、昼夜で異なる街の景観を楽しめる「シティビュー」、そして海に浮かぶ小さな島々をイメージして計画された中庭が様々な表情を見せる「ガーデンサイド」で構成されている。
中庭
中庭は、日本有数の観光地である横浜の景観に負けないよう、発注者が自ら庭石や植木を産地に赴いて選定し、レイアウトしている。
また、3階をレベルに設定しているため、200tクローラクレーンを残しながら短期間での施工となった。
発注者、設計者も特に力を入れている部分であり、庭石や植木の配置はもとより、小石のみだれや枝の折れ、電気配線の処理にまで気を配った。
吹き抜け
ホテルエントランスを入ってすぐの吹き抜けや螺旋階段は、建物に入った瞬間に別の空間に移動したかのような幻想的な雰囲気を醸し出しており、施工精度と品質管理に特に力を入れた部分である。
ラグジュアリーなホテルらしく曲面を多用した柔らかい雰囲気の中に質感・色・調光を含めて高級感があり、利用者の満足感を刺激する。
商業施設、ホテル共に間接照明や曲面のある壁や天井を多用しているため、納まりが複雑であったが発注者の意図を汲み、利用者目線で仕上がりを追求し、竣工間際まで改良を重ねた。
横断幕
現場では、横断幕を掲揚することで、職員・作業員の安全意識の高揚を図った。横断幕は全長10メートル、素材はメッシュで強風にも耐えられる。なお、安全スローガンの「絶対に事故を起せない戦いがここにある!!」は全職長から募り、厳選したものである。
特定工事所長 隈元 洋一
当工事を担当した東京建築支店の特定工事所長隈元洋一は、「施工にあたって現場は常に見られていることを肝に銘じ、緊張感をもって仕事をすることを心がけました。 横浜という立地で注目度の高い仕事をさせていただけたことをとても誇りに思います。 当工事では、特に強風による海への飛散防止対策として、資材にネットやチェーンを用いて養生を行い、第三者災害対策として、現場内に人が間違って侵入しないように夜間の見回りを強化しました。 また、日課として一人ひとつできるようになったことを発表させるなど若手の育成にも力を入れました。 改めて当工事に携われたことは私の誇りであり、関係者の皆さまに感謝申し上げます」と話す。
工事名称 | YOKOHAMA HAMMERHEAD PROJECT新築工事 | |
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施工場所 | 神奈川県横浜市中区新港 | |
工期 | 2018年6月1日〜2019年9月30日 | |
発注者 | 新港ふ頭客船ターミナル(株) (株)T・Yホールディングス |
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設計・監理 | (株)梓設計 | |
施工者 | 五洋建設(株) | |
工事概要 | 構造 | S造、地上5階 |
建築面積 | 10,011.54m2 | |
延床面積 | 30,282.63m2 |
関連工事の紹介
【新港ふ頭9号岸壁整備工事】
新港ふ頭9号岸壁整備工事
新港ふ頭9号岸壁整備工事は、既存の岸壁(延長170m)をアンカー式矢板式係船岸構造にて改良し、また沖合へ延伸するようジャケット式桟橋構造にて新設するものである(延長170m)。共に耐震強化岸壁として設計された。耐震強化岸壁とは、阪神淡路大震災や東日本大震災クラスの地震動(レベル2地震動)にも耐え得る構造で設計された岸壁である。災害時は救援物資輸送の拠点としても使用される。当社は既存岸壁部90mの整備工事を担当した。
既存岸壁部の下部は、前面(海側)に打設した高強度の鋼管矢板を、その背面(陸側)へ斜め45度下方向の基盤層に二重防食構造グラウンドアンカーを打ち込んで支持する構造であった。下部工事は起重機船にて鋼管矢板打設を、SEP船(自己昇降式作業台船)にてグラウンドアンカー工を施工した。グラウンドアンカーの施工は、約70tもの緊張力を保持するため、徹底した品質管理を行った。
また、上部工は現場打ちコンクリートで施工する前面(鋼管矢板の上部)と背面基礎工との間に工場製作のPC桁(プレストレストコンクリート桁)を岸壁直角方向に並べる構造であった。そのため上部工では、現場打ちコンクリートおよびPC桁の出来形管理、品質管理に注力した。また、施工にあたって作業スペースとなる背後地は、建築工事も同時に施工を進めたため非常に狭く、先行してPC桁設置個所に仮設構台を設置して作業スペースや資材置場を確保した。
当工事を担当した東京土木支店の工事所長川崎隆広は「設計者の意図や目的を汲み取り、公共永久構造物としてその役割をしっかり果たせるよう、確実な施工と厳密な品質管理の遂行を心がけた」と話す。