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現場位置図
久光製薬ミュージアムは、長崎自動車道鳥栖ICにほど近い久光製薬(株)九州本社・鳥栖工場の敷地内に位置し、同社の創業170周年記念事業の一環として、ステークホルダーへの感謝と久光製薬(株)の歴史と伝統を後世に発信する目的で計画され、2019年2月15日に完成した。
久光製薬(株)様は持続可能な社会の実現を目標にしたCSR活動の一環として、自社の事業活動における省エネやエネルギーの効率的な利用に積極的に取り組まれている。当社はお客様のニーズに応えるべく「ZEB(Zero Energy Building)」を提案した。また、デザイン性が高い当建物の施工では、BIM(Building Information Modeling)を活用することで発注者、設計事務所と完成イメージを共有しながら工事を進めた。
省エネ率103%(創エネルギーを含む)を達成し、佐賀県で初めて建築物省エネルギ―性能表示制度(BELS)の最高ランク「☆☆☆☆☆」「ZEB※」の認証を取得した。「ZEB」化の提案では、屋根の断熱強化や空調設備等の省エネ化、系統の細分化に加え、各種センサー設置による設備機器の運転制御等で、高い省エネ率を実現した。創エネルギーとして太陽光発電を採用し、屋根面に太陽光パネルを配置して年間を通して多くの電力量を確保している。また、デザインへの影響を避けるため、太陽光パネルが地上から見えないように、高さと角度に配慮して設置した。今後、エネルギー消費量をモニタリング・分析し、採用技術の効果を把握するとともに、運転制御技術の蓄積を図っていく。
※ZEB(Zero Energy Building)
年間一次エネルギー消費が正味(ネット)でゼロとなる建築物
- 「ZEB」の考え方
- 「ZEB」チャート
- BELS「ZEB」認証プレート
基本デザインは世界的に著名なイタリアの彫刻家であるチェッコ・ボナノッテ氏(以下、デザイナー)、設計は安井建築設計事務所が手がけており、デザイン性が高い建物となっている。そのデザインを実現するため、外装仕上げや内装、設備の施工納まりについて、BIMを活用した事前検討を行った。特に外観デザインを構成する、石やガラスカーテンウォール(GCW)、乳白色ガラスとそれらの間の石ボーダーの各所詳細納まりや外観イメージについて、BIMモデルを活用して、発注者、デザイナー、設計事務所と綿密に打ち合わせを行い、完成イメージを共有しながら工事を進めた。
- BIMモデル(石・ボーダー)
- BIMモデル(石・ボーダー)
- BIMモデル(外観レンダリング)
構造はRC造で、はね出しスラブの張り出しが非常に大きいデザインとなっている。たわみを抑制するため、アンボンドPCスラブとPRC梁を採用した。アンボンドPC鋼線の位置は、専用のスペーサーを使用して精度を確保した。コンクリートのレベルは、システム支保工を使用し強固に固定して精度を確保した。コンクリート強度発現後の緊張作業は、バランスよく緊張力が入るように中央から端部に向けて緊張する手順で行った。
- はね出しスラブのアンボンドPC鋼線の設置状況
- PRC梁のPC鋼線緊張状況
躯体工事と並行して、外装仕上げ材の質感を確認するため、ガラスカーテンウォールや石、アルミルーバー等のモックアップを試作し、デザイナーと設計者に事前確認を行った。また、ガラスカーテンウォールの施工は、上下階で角度が違う箇所、斜め屋根の形状や乳白色ガラス、石との取合等、形状も納まりも複雑なものとなった。各部材の製作図の作成段階からBIMによる検討結果を反映しながら設計者と打合せを重ね、施工納まりを決めていった。カーテンウォール枠の取り付けでは3次元計測を用いて精度を確保し、1枚400sのガラスはクレーン車で揚重して設置するなど、慎重に工事を進めた。
- 外装仕上げモックアップ
- ガラスカーテンウォール施工状況
内部の展示室には、建物のデザインを手がけた彫刻家チェッコ・ボナノッテ氏の作品が展示されており、開口部から見える敷地内の樹木とも調和がとれている。内装工事は、開口部との取合や大きな面の床、壁、天井仕上の平滑性に気をつけながら進めた。工事中に彫刻や展示品の設置を終える必要があったため、搬入方法や設置手順について展示業者と調整しながらの仕上工事となった。
- 2階展示スペース
- 2階展示スペース
既存樹木のある敷地内での外構工事は、樹木を保護しながらの施工となった。なかでも通路や彫刻の設置台の工事では、既存樹木の保護に細心の注意を払った。また、重量のある彫刻を設置する際に揚重機を使用する必要があったため、吊り箇所等の検討に苦労したが、無事完了させることができた。
- 久光製薬(株)九州本社・鳥栖工場前の敷地全景
- 樹木と彫刻のある敷地内の建物
工事所長 辻本 秀明
現場の仮設進入口は、北側の本設入口からの進入が禁止されており、西側も段差があるため、南側の市道側に仮に設置し復旧するなど、移動しながらの工事となりました。また、市道は近隣の小・中・高校の通学路であり、通学時間帯に工事車両の進入を禁止し、誘導員を配置して学童の安全を最優先で施工しました。
建物はRC造2階建、延床690m2弱と小ぶりですが、樹木の中に彫刻を配置した敷地内に洒落た建物として完成しました。外壁を構成する石・カーテンウォール・乳白色ガラスにはデザイナーの細かなこだわりが感じられます。
施工においては、発注者・設計事務所との打合せでZEB化に伴う詳細な技術検討とともに、BIMの活用により完成イメージを共有しながら進めたことで、発注者から高い評価を得ることができました。敷地の整備工事は5,000m2を超える外構工事であり、搬入計画に苦労しました。
今回の工事は注目度が高く工期も短い中での施工でしたが、毎週打合せを重ねることで、発注者及び設計者と良好な関係を築くことができ、三者が工期内竣工の目標に向け力を発揮し、無事に最後までやり遂げることができました。竣工時には発注者より当社に対してお礼の言葉をいただき、私自身充実した現場であったことから達成感でいっぱいです。
夜景
工事名称 | 久光製薬ミュージアム建設工事 | |
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施工場所 | 佐賀県鳥栖市田代大官町 | |
工期 | 2018年5月25日〜2019年2月15日 | |
発注者 | 久光製薬(株) | |
設計・監理 | (株)安井建築設計事務所 | |
施工者 | 五洋・伸晃特定建設工事共同企業体 | |
構造 | RC造 | 2階建 |
建築面積 | 389.78m2 | |
延床面積 | 687.63m2 |