このページは、ホームソリューション・技術プロジェクトプロジェクトストーリー自航式ポンプ浚渫船「CASSIOPEIAX」のページです。
浚渫作業イメージ
当社の経験と技術を結集した自航式ポンプ浚渫船「CASSIOPEIA X」(カシオペア・ファイブ)が完成した。
ポンプ浚渫船は、浚渫・埋立工事に使用する作業船で、ラダー先端に取り付けられたカッターで海底地盤を掘削し、その土砂を浚渫ポンプで海水とともに吸い上げ、パイプラインを通じて排出先に送る機能を有する作業船だ。国内で稼働しているポンプ浚渫船は、1970年代に建造された船が最後となっていた。
カッターヘッド
「CASSIOPEIA X」は、ポンプ浚渫船の建造技術を継承することと、今後東南アジアで拡大が見込まれる港湾整備の工事増加に対応するために計画され、2011年9月よりシンガポールの造船所で建造を開始した。完成までの約3年間、新造を担当した船舶機械部の松藤広行は、本船について「世界で活躍しているポンプ浚渫船を分析し、設備の配置など良いところを新造船に盛り込みました。また機材はアジアやヨーロッパより選りすぐったものを取り寄せています」と、また当社のグループ会社である五栄土木の深川隆は「浚渫をする際のカッターラダーの動きなどは、私たちが経験した施工方法から設計しました。これまでに培った技術を活かしています」と教えてくれた。まさにポンプ浚渫船の真の実力を発揮する、ヨーロッパの最新技術と当社の伝統を融合させた次世代を担うフラッグシップだ。
全旋回型推進器
船のサイズや浚渫能力は、今後予想される工事の規模や施工場所などのバランスを考慮して決められた。船体は、全長123m、幅23m。船内の浚渫ポンプ能力は、国内最大船(5,880kW)の約1.4倍に当たる8,000kW(2×4,000kW)を誇る。
特長は、日本国内のポンプ浚渫船としては初となる自航式ということだ。これまではタグボートに曳航されながら移動をしていたが、本船は、全旋回型推進器を搭載しているため、自ら航行し移動することができる。タグボートよりも高速移動が可能で、供用中の航路浚渫の際も迅速な退避ができるなど、機動力が大きく高まっている。
また、従来は、カッターラダーをスイングさせるアンカーの打ち替えにも必ず揚錨船が必要であったが、本船は、アンカー打替用ブーム及びアンカー起こし用ウィンチを装備しているので、自船のみでアンカーを打ち替えることができ、また、狭隘なエリアでも施工が可能となった。
浚渫管理画面
さらに、自動浚渫モードを搭載しているため、効率的な浚渫と高い施工精度を実現している。カッターヘッドの回転、ラダーウィンチ、スイングウィンチ、スパッドキャリアーの操作などを自動化し、これまではオペレーターの技量に左右されていた施工精度も、経験が少ないオペレーターが操作したとしても一定のレベルを保てる。
その他、船を扇形にスイングさせるための船体から海底へ突き立てる円形のスパッドは、大口径スパッドおよびスパッド緩衝装置によって、厳しい海象条件でも船を稼働させることができる。構造・設備については国際航海に必要な基準に準じており、全世界での活躍が可能だ。船内の居室は47名分を確保し、各居室にはシャワー付きトイレユニットや冷蔵庫、衛星テレビ、インターネット環境を装備し、快適に過ごすことができる。
本船で、自動浚渫機能など、船の頭脳の部分にあたる電気設備を担当した船舶機械部の八島慎治は、「2010年に完成した深層混合処理船『ポコム12号』で、自動化の技術を追求したことによって、ノウハウが蓄積されました」と話す。八島も松藤も「ポコム12号」の建造に携わっており、今回、海外での建造にその経験は大きく活かされたという。日本と海外との違いについて、松藤は「日本では契約書に記載がなくても、当たり前のことは造船会社が施工してくれますが、海外では契約書以外の作業は進めてくれません。今回は契約書に記載のない重要なモレの有無を特に注意しました」と話す。造船は設計と並行しながら進捗していくので仕様変更が多いが、海外の造船会社は重要な工程が抜けていても指摘はしてくれない。そのため、約200ページもの契約書と5,000冊にも及ぶ設計図書を頭に入れて施工を進めたことにより、大きな見直しや手戻りが少なく済んだという。また、作業員も文化・風習が違うため、マニュアル通りにはいかないことも多く、溶接等の施工のチェックも細部にわたり厳しく行われた。。
主な建造の流れ
施工状況
本船は現在、シンガポールのコンテナターミナルを建設するための浚渫・埋立工事で稼働している。船の完成を迎え八島は「初期トラブルも少なく、順調に稼働しています。しかし、わずかな異常でも大きな事故につながりかねませんし、設計した通りの性能が実際に出せるかはこれからです」と安全施工を願う。
操船室
操船室では、オペレーターがパソコンの画面を確認しながら、手元のレバーを動かした。青空に両腕を広げるように、高々と広げたアンカーブームが動き出し、浚渫作業が開始される。これまでのポンプ浚渫船に比べ、振動と騒音が少ないのが印象的だ。
夜空のカシオペア座は、北極星を探し出すために利用される星座で有名である。「CASSIOPEIA X」も、今後、当社が海外でさらなる活躍をするために導いてくれるに違いない。
- 打ち合わせスペース
- 厨房
- 居室
国際事業本部
副本部長
勝村 潤治
- 近年、東南アジア、南アジアの発展は目覚ましく、今後も国の経済発展を支える港湾の整備工事は見込まれます。国際部門では、国際競争力を維持するために、自航式、自動化、高い浚渫能力の揃った最新鋭の浚渫船を、長期にわたって熱望していました。今回完成した「CASSIOPEIA X」は、ヨーロッパの埋立・浚渫の専門業者にも引けを取らない浚渫船です。
今後、「CASSIOPEIA X」の活躍によって、発展途上国のさらなる発展、そして当社の成長に繋がることを願っています。
土木本部
船舶機械部長
久留島 匡繕
- 当社において、ポンプ浚渫船は基本となる、欠くことのできない技術です。現在稼働しているポンプ浚渫船は1970年代に建造された船で、これまで、国内だけでなくスエズ運河やシンガポール大型埋立工事等、色々な場所で苦労を乗り越えてきました。「CASSIOPEIA X」には、こうした諸先輩方が培ってきたポンプ浚渫船技術のノウハウが多く盛り込まれ、さらに最新の浚渫技術が導入されています。これから、海外において、ヨーロッパ勢に勝る「CASSIOPEIA X」の活躍を期待しています。
土木本部
船舶機械部担当部長
八島 慎治
- これまでに、これほどの技術を要する作業船をシンガポールで建造したことがなかったこと、そして機器メーカーのほとんどが日本の会社ではなかったこともあり、建造終了までは大きな不安がありました。運転を開始してから、大きな故障・トラブルもなく順調にきていることに胸を撫で下ろしています。当社が保有している技術は世界に負けていないと思われる部分は多々あり、今回培った技術を将来に活かしていきたいと思います。
土木本部
船舶機械部担当課長
松藤 広行
- 海外での建造であるが故の苦労もありましたが、ベテランの技術者とともに世界最新鋭の自航式ポンプ浚渫船を建造したことは、当社の浚渫技術の継承とステップアップに大きく寄与できたものと確信しています。建造中はヨーロッパと当社の浚渫技術の違いや、新旧の設計手法の違いを感じることができました。このような経験を踏まえ、今後も海外の浚渫コンストラクターに打ち勝てるよう技術レベルのさらなる向上に努めて参ります。
五栄土木株式会社
船舶部部長
深川 隆
- 近年の浚渫技術は、当社が1970年代に建造したポンプ浚渫船よりも格段に進歩しています。本船ではスパッド緩衝装置や自動浚渫装置などの最新技術を採用し、また、諸先輩が、国内外の浚渫工事などで長年苦労して得られた浚渫ノウハウ、特に岩盤浚渫に関する当社独自の技術を反映させるように計画しました。自動化・省力化した新造船にありがちな初期トラブルも少なく順調に稼働しているので、建造担当者としては一安心です。
主要諸元 | |
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建造所(Builder) | ASL SHIPYARD PTE LTD, |
建造年月(Year built) | 2014年8月 |
船級(Classification) | BV |
船籍(Flag) | シンガポール |
総トン数(Gross tonnage) | 5,903GT |
全長(Overrall length) | 123.20m |
垂線間長さ(Length between p.p.) | 101.18m |
幅(Breadth (mld.)) | 23.0m |
深さ(Depth (mld.)) | 9.27m |
満載喫水(Maximum draught) | 5.0m |
吸水管径(Suction pipe diameter) | 900mm |
吐出管径(Discharge pipe diameter) | 850mm |
浚渫深度(Dredging depth) | -6m〜-32m |
浚渫ポンプ(船内)出力(Inboard dredge pumps) | 2×4,000kW |
浚渫ポンプ(水中)出力(Submersible dredge pump) | 2,800kW |
カッター出力(Cutter power) | 3,000kW |
主機関出力(Main engines) | 2×8,640kW |
機関総出力(Total installed diesel power) | 19,215kW |
推進器出力(Propulsion power) | 2×2,500kW |
運航速度(Sailing speed) | 10.8knots |