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現場全景
設置場所
東日本大震災以降、エネルギーの多様化が叫ばれる中、再生可能エネルギーに寄せられる期待は大きい。再生可能エネルギーを活用した発電方法には太陽光発電をはじめ、数多く存在するが、洋上風力発電はその潜在的なポテンシャルと発電コストの優位性から欧州を中心に導入が進んでおり、日本国内でも普及が期待されている。
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が取り組む「洋上風力発電システム実証研究」および「洋上風況観測システム実証研究」の枠組みの中で、電源開発株式会社からの発注のもと、当社は2011年8月から2013年5月まで、北九州市沖での洋上風力発電施設の基礎構造設計・製作・据付と風車組立、および洋上風況観測塔の基礎製作・据付、観測塔組立に取り組んだ。
ハイブリッド重力式支持構造物
風車が建設される場所は福岡県北九州市の沖合約1.4kmにある水深約14m地点。そこに2MW級の風車1基と風況観測塔(高さ85m)が建設される。
今回、基礎構造には鋼管と鉄筋コンクリートを併用した「ハイブリッド重力式支持構造物」が採用された。
鋼管部分はジャケット構造になっており、波が透過するため、通常のケーソン堤などに比べ大幅に波力を低減できる。また、鉄筋コンクリート底版が最下部にあり、重心が低いため地震時の安定性にも優れている。
高さ60mを超える建築物・工作物は、構造設計の審査を伴う国土交通省の大臣認定が必要である。前例がない外洋での風車建設であるため、認定取得には多くの困難が伴ったが、2012年3月大臣認定が取得された。
施工場所は日本海に面し、冬季の季節風や波浪が厳しい海域である。
事業工程では、風車建設完了(電設工事は除く)は2013年3月末である。大臣認定取得からわずか1年間で風車建設を完了させるために、厳しい気海象条件下での建設工事が始まった。
捨石マウンドの築造
重錘落下による機械式での均し作業
風車建設には鉛直精度の確保が至上命題である。
通常、陸上の風力発電施設では鉄筋コンクリート基礎の天端面をレベル調整し風車タワーと接合される。今回は耐久性や安全性の観点から接合部でのレベル調整は行わないこととしたため、支持構造物の鉛直精度、すなわち捨石マウンドの水平精度がそのまま風車の鉛直精度に反映される。
そこで、捨石マウンドの築造には転圧が可能な重錘落下による機械式での均し作業を行った。
その結果、洋上風車、風況観測塔とも高い鉛直精度を確保することができた。また、自動追尾型トータルステーションによる管理システムの導入が鉛直精度の確保に大きく寄与した。
支持構造物の製作・据付
大型起重機船による支持構造物の据付
洋上での作業を最小限とするため、支持構造物はプレキャスト化している。そのため重量は4,000tを超えており、製作・据付には浮力が活用できるフローティングドックと3,700t吊の大型起重機船を併用した。
支持構造物の据付完了は2012年10月。工程を考えると引き続き風車タワーの建設に取り掛かるところであるが、現地海域の海象面は日本海特有の厳しい時期にあたる。そこで、10月から1月までは越冬期間として工事を中断し、工事再開に備えた。
風車の組立
SEP船を活用した洋上での風車組立
現地の海域は、季節風の影響により、通常であれば2〜3月は工事ができるような海象状況ではない。しかし、2013年3月の完工に向けて、高波浪の合間をぬって施工することが求められた。
そこで、当社独自の気海象予測システムをさらに高度化し、施工管理に活用した。
その結果、予報的中率は90%を超え、細やかな施工管理、工程管理を可能にした。
洋上風力発電のマーケットが成熟している欧州とは違い、風車据付専用船が存在しないことや、風車部品やクローラークレーンをSEP船に積み込む際に岸壁の耐力が不足するなど港湾インフラの面で厳しい状況ではあったが、発注者や協力会社、関係各署の協力のもと、2013年3月23日、洋上風車が完成した。
総括所長 小薗澄久
当工事を統括した小薗澄久総括所長は、「外洋での洋上風車と洋上風況観測塔の施工は銚子沖とここ北九州沖だけですので、関連事業者からは必然的に注目されていました。そのような状況下で、さまざまな関係者との連携を密にして良好な関係を構築し、安全には細心の注意を払いながら日々工事を進めてまいりました」と語る。
その思いが、前例のない沖合での洋上風車建設工事において、冬季の厳しい気海象条件を克服して、無事故・無災害での完工に繋がった。
NEDOによる実証研究を契機に、国内各地で洋上風力発電の導入促進が期待されている。
一方で、国内外の風車メーカーでは風車の大型化に向けた開発が進んでおり、それに対応すべき施工面での課題も多い。
当社では長年培ってきた高度な海洋土木技術に加え、当工事において得られた洋上風力発電施設の施工実績・ノウハウによってこれら諸課題の克服に鋭意取り組むとともに、これからも施工技術等の研鑚に努め、日本の洋上風力発電の発展のためにしっかりとその役割を果たしていきたい。
工事名称 | 洋上風況観測システム実証研究に係る風況観測塔基礎および据付工事 | |
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工事場所 | 福岡県北九州市若松区響町地先 | |
工期 | 2011年8月22日〜2012年9月30日 | |
発注者 | 電源開発(株) | |
施工 | 五洋建設(株) | |
工事内容 | 基礎工 | 基礎捨石:3,106m3 表面整理(重錐均し併用):2,665m2 被覆・根固ブロック製作据付:一式 |
本体工 | ハイブリッド重力式基礎(2,800t)製作・据付:一式 観測鉄塔据付:一式 |
工事名称 | 洋上風力発電システム実証研究に係る風車基礎および本体据付工事(T期) | ||
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工事場所 | 福岡県北九州市若松区響町地先 | ||
工期 | 2011年11月2日〜2013年1月31日 | ||
発注者 | 電源開発(株) | ||
施工 | 五洋建設(株) | ||
工事内容 | 基礎工 | 風車基礎 | 基礎捨石:5,561m3 表面処理(重錘均し併用):3,643m2 被覆・根固ブロック製作据付:一式 |
海上鉄柱基礎 | 基礎捨石:1,841 m3 表面処理(重錘均し併用):1,828 m2 被覆・根固ブロック製作据付:一式 |
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本体工 | 風車基礎 | ハイブリッド重力式基礎(4,100t)製作・据付:一式 | |
海上鉄柱基礎 | ハイブリッド重力式基礎(1,200t)製作・据付:一式 |
工事名称 | 洋上風力発電システム実証研究に係る風車基礎および本体据付工事(U期) | |
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工事場所 | 福岡県北九州市若松区響町地先 | |
工期 | 2012年12月3日〜2013年5月31日 | |
発注者 | 電源開発(株) | |
施工 | 五洋建設(株) | |
工事内容 | 本体工 | 風車発電設備(2.0MW)据付:一式 |