このページは、ホームソリューション・技術プロジェクトプロジェクトストーリー多目的自航式起重機船「CP-5001」のページです。
航行区域図 (画像拡大)
2012年6月、大型多目的自航式起重機船「CP-5001」が完成した。本船は、500t吊全旋回式クレーンを装備し、クレーン作業、浚渫作業、砕岩、魚礁沈設作業など多彩な作業が可能で国内初の近海区域内を自航可能な作業船である。
この船は、我が国の国際競争力向上のための戦略的・重点的高度な港湾整備や、既存の港湾施設の延命化、耐震機能向上の必要性、そして離島での港湾整備プロジェクトなどに対応するために、2011年5月下旬より約1年の歳月をかけて新規建造したものだ。
本船は長期間の航行と多種多様な作業を行うため、作業甲板は広いスペースを確保しており、資機材の運搬なども可能となっている。 また、操船性能の向上を図るとともに海洋ブロードバンドや高精度GPSによる多目的施工管理システムなどの最新技術の各システムを搭載しているほか、作業員の生活空間や省エネ効果など環境に配慮した船となっている。
「CP-5001」各種作業イメージ
定位置で全旋回可能
本船は、浅瀬での作業も可能なように、喫水が浅く、広い貨物積載甲板を持った構造をしている。貨物搭載スペースには、約2,300tもの貨物が積載可能である。甲板上は通常より強度の高い鋼材を使用し、積載物の集中荷重にも耐えられるように設計されている。
また、全旋回式可変ピッチプロペラ推進機2基および全旋回ポンプジェット式バウスラスタ2基の組み合わせにより洋上での定点保持、全旋回が可能な操船性能を有している。さらに、設定航路上を自動的に航行することが可能なルートトラッキングを装備し、各操船モードにおいて、最適な翼角、舵角、回転数を自動決定し船の能力を最大限に引き出して、船体を省力化している。
浚渫作業に関しては、硬土盤用浚渫バケット、砕岩棒を装備し、強固な岩盤浚渫や構造物撤去が可能であり、魚礁沈設作業では、自動定点保持装置と自動バラスト制御装置を設置し、アンカー係留が困難とされてきた大水深下でも安定した状況で作業可能で施工の向上を図るなど、港湾作業により適した作業船になっている。
- 500t吊全旋回式クレーン搭載状況
- 砕岩棒・硬度盤用浚渫バケット搭載状況
今回、高速衛星通信を利用した「海洋ブロードバンド」を導入し、ネットワークシステムが構築された。これにより、従来、遠隔離島工事では困難とされてきた「TV会議システム」「IPカメラ遠隔監視システム」の使用が可能となり、工事現場と本社・関係部署との業務打ち合わせも可能となった。
そして「高精度GPSによる多目的施工管理システム」を搭載し、クレーン作業、浚渫作業、砕岩、魚礁沈設作業などクレーンで行うすべての作業をオペレータが操作室より管理画面を見ながら制御ができるようになり、作業の効率化を図っている。
さらに当社保有の技術である「水中転落者早期発見システム」をはじめ、クレーンの起伏ワイヤの劣化状態を自動で検知する「ワイヤロープ遠隔監視システム」及び、施工・航行中に他船への注意勧告を行える「電光掲示板システム」を積極的に採用するなど安全性の機能も強化されている。
CP-5001に搭載された各システム
- 会議室(TV会議システム)
- IPカメラ遠隔監視システム
- 高精度GPS多目的施工管理システム(画像拡大)
※水中転落者早期発見システム(別ウィンドウで開きます)
2011年5月に建造開始した本船は、12月には進水式、2012年6月15日にお披露目式を執り行った。お披露目式では、多数の来賓、建造関係者、マスコミなどを招いて総勢約210名で本船の完成を祝った。
見学会後の完成披露宴で当社代表取締役社長の村重芳雄は「本船は環境対策や安全対策・自動制御に関する最新技術を導入しており、新しい時代における社会的要請にこれまで以上に応えられる作業船であります。当社はこの『CP-5001』をはじめとする各種作業船を駆使し、海洋土木分野のプロフェッショナルとして、社会からのさまざまな要請に応え、今後ともわが国の発展に寄与していきたいと考えております」と述べ、喜びと今後の抱負を語った。
臨海部ナンバーワン企業として長年に渡り培ってきた技術とノウハウと最新の技術が搭載された大型多目的自航式起重機船「CP-5001」。
作業船としての役割のみならず、わが国の社会的要請に応える船として今後大いに活躍が期待される。
- 進水式
- 完成披露宴で挨拶する村重芳雄社長
土木部門 土木本部 副本部長
山内 定義
- 多種多様な海上工事に対応できる本船の建造は「使いやすい船」を目指し、関係者が一丸となって知恵を出し合いました。船体の形状は、要求する速力や馬力など、船の基本仕様の事前確認のため、木製の船体模型を数種類製作、水槽実験を重ね機能的な形状を決定しました。
本船は、2018年から施行される船舶安全法の改正に適合した、新しい形状の作業船建造ですが、若手社員は積極的に取り組み、技術の継承を含め大きく成長していきました。本船とともに彼らの今後の活躍も大いに期待しています。
土木部門 土木本部
船舶機械部長
久留島 匡繕
- これだけの多目的自航式起重機船の建造は国内初の試みであったため、造船会社をはじめ、機器メーカー、法律関係者などさまざまな方のご協力により、約1年の歳月をかけて完成に至りました。
遠隔離島工事用の船として建造が始まりましたが、「多目的」というように、今後さまざまな局面で活躍することが期待されます。社外に対し、「CP-5001」という船をアピールし、活躍できる場を作り、あらゆることにチャレンジしていきます。
土木部門 土木本部
船舶機械部 船舶グループ
係長(電気システム担当)
園部 陽一
- 本船の各システムの設置については、機器の故障時にバックアップができる機能を持たせることに重点を置き、各機器の性能もさることながら、船の艤装の仕上がり状況を見ながら各機器の導入時期、各配置、設置・固定方法まで決めていきました。
特に機器配置には、使用者の動線や使用頻度が大きなカギになりますので、乗組員が使いやすいように配置することを心掛けました。
土木部門 土木本部
船舶機械部 船舶グループ
(船体・機械艤装担当)
秋元 貴太
- 自航式起重機船の建造例は、過去に建造例がないことから、当社の保有船である自航船の技術と作業船の技術を組み合わせて、関係者の声を参考にしながら検討していきました。
また、乗組員の方々が快適かつ安心して工事に従事できる船を提供するために、各部位の細部に渡るまでの配慮や確認等、艤装品据付の工夫をしながら作業を行いました。
主要諸元 | ||
---|---|---|
一般 | 船種 | 多目的自航式起重機船 |
航行区域 | 近海区域(非国際) | |
船級 | NK、NS※(CV)、MNS※ | |
用途 | 作業船 | |
主要寸法 | 船体寸法 | (全長×幅×深さ) 90.50m×27.00m×5.00m |
満載喫水 | 3.71m | |
総トン数 | 4,801t | |
定員等 | 船員 | 12名、その他の乗船者:40名(最大合計52名) |
主機関、速力等 | 主機関 | 4サイクルディーゼル機関(2000PS)×2台 |
速力 | 最大速力 約12ノット 満載航海速力 約10ノット |
|
航続距離 | 約10,000海里 | |
貨物積載甲板 | 搭載面積 | 768m2(1,065m3) |
積載重量 | 2,300t | |
荷役装置 | 主クレーン | 全旋回式起重機 |
駆動 | ディーゼル機関(2000PS) | |
吊り荷重×作業半径 | 主巻 500t×11.0m(ジブ長さ:25.0m) 第一補巻 60t×41.9m(ジブ長さ:35.8m) |
|
グラブ浚渫能力 | 直巻荷重60t | |
操船装置 | 推進機 | 全旋回式4翼可変ピッチプロペラ×2基 |
バウスラスタ | ポンプジェット方式(1000PS)×2基 オートパイロット及び洋上での定点保持機能を有す |
|
浚渫装置 | 硬土盤用浚渫バケット | 6m3(45t)×1式 |
オレンジバケット | 8m3(38t)×1式 | |
砕岩棒 | 40t×1式 | |
揚錨 兼 交通船 | 総トン数 | 10t |
揚錨装置 | 5tウィンチ | |
航行区域 | 限定近海(母船周り1海里)及び限定沿海(沿岸5海里) | |
定員 | 11名 |