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現場全景
富山県黒部市生地にある下新川海岸。富山湾の入口付近に位置するこの場所で、現在、海岸堤防から約50m沖合に、全国で初めてS-VHS工法による全長100mの新型離岸堤築造工事が進んでいる。
新工法を適用した離岸堤は、波浪エネルギーを低減して越波を抑制する機能と沿岸漂砂を制御する機能を両立した構造となっており、富山湾特有の高波「寄り回り波(うねり性波浪)」(※注1)による浸水被害に対する当地域への安全性の確保を目的としたものだ。
当社は、このS-VHS工法を自社単独にて開発、2008年には(財)土木研究センターより建設技術審査証明書を取得、2009年に総合評価高度技術提案U型(設計・施工一括発注方式)で当工事を受注、2010年1月より設計を開始、同年10月上旬から工事に着手している。
※ 注1:日本海北部の暴風域で発生・成長したうねりが、長い距離を伝播して富山沖で海底地形の影響から陸の方へ向きを変えて湾内の海岸へ押し寄せる高波のこと。各地を寄って回るように来襲するため、この地では古くから「寄り回り波」と言われている。
- 位置図
- S-VHS工法イメージ
新工法であるS-VHS工法は、当社にて実績を多数有する従来工法であるVHS工法の改良型で大きく3つの特徴がある。
まず、堤体部を上部斜面形状とすることで波の一部が上方に分散されるとともに、斜面部波力の鉛直成分は堤体を安定させる方向の下向きに作用する。これにより、従来工法と同じ消波性能(反射率0.50以下、透過率0.60以下)を保ちながら、高波浪に対する安定性を向上させている。
そして、作用波力の低減により杭断面や根入長が小さくなったため、杭製作コストを縮減でき、従来工法に比べて10〜20%のコストダウンが可能となった。
さらに、堤体の高さが低く、景観性に優れているとともに、スリットとよばれる開口部により堤体前後の海水が交換されるため、優れた漁礁効果を期待でき、環境にも優しい工法となっている。
この新型離岸堤工事では、分割型の堤体構造を採用している。
これは、現地での調達可能な起重機船が250t吊級であるため、堤体を3つのブロックに分割して製作、ブロックの軽量化を図ったものである。
まず、堤体製作に際しては、当現場は日本海に面した厳しい気象条件であることから、さまざまな工夫を行った。
2010年10月から2011年3月と秋から冬にかけての施工となったため、屋根やシートにて雪寒仮囲いの設置、ジェットヒーターを使用した給熱養生によるコンクリート温度の5℃以上の確保、コンクリート養生日数の延長を行った。
また、計画段階で温度応力解析(コンクリート構造物における施工段階で生じるひび割れの照査)を実施した。その結果、ひび割れはコンクリート型枠を外した後の表面部の乾燥収縮により生じる可能性が高いと判断し、陸上製作ヤードでスプリンクラーの常時散水や大型麻製養生シートにて28日間の湿潤養生を徹底し工事を進めるなど、コンクリートの品質を確保した。
そして、2011年7月中旬、これらのブロックを陸上製作ヤードから起重機船にて海上運搬し、据付作業を行った。
- 屋根およびシートによる雪寒仮囲い
- 大型養生シートとスプリンクラーによる湿潤養生
工事名称 | 下新川海岸生地新型離岸堤工事 | |
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工事場所 | 富山県黒部市生地地先 | |
工期 | 2010年 1月 6日 〜 2011年12月 1日 | |
発注者 | 国土交通省 北陸地方整備局 | |
設計 | 五洋建設(株) | |
施工者 | 五洋建設(株) | |
工事内容 | 堤体製作工 | コンクリート 1,950.0m3 |
鉄筋 241.4t | ||
ガイド鋼管 176本 | ||
鋼管杭工 | 鋼管杭打設 46本 | |
連結管設置 20本 | ||
堤体据付工 | 11基 (堤体:33個、延長 100.0m ) | |
間詰工 | 水中不分離モルタル 146m3 | |
頭部ブロック製作・据付 22個 | ||
付属工 | 電気防食 46個 | |
簡易標識灯 2基 | ||
係船柱 2基 |