このページは、ホームソリューション・技術プロジェクトプロジェクトストーリーPOSCO-JKPC(株)苅田加工物流センター新築工事のページです。
位置図
自動車関連産業が集積する苅田地区で、鉄骨や鋼板といった鉄鋼鋼材を加工するための「POSCO−JKPC(株)苅田加工物流センター」が完成した。POSCO−JKPC(株)の要請を受けて用地確保から支店一体となって取り組んだもので、低コストかつ短工期での完成を実現した。建設地の苅田地区は、わが社が約30年前に施工した埋立地で、50年の歴史を持つ常設事務所もある。よって、土地や地区の状況などの情報に最も詳しいという強みが受注に繋がった。
施工にあたっては、必要とする機能を維持したまま低コスト化を提案する構造VEを採用した。倉庫・加工棟で1階床部分のフラットスラブ構造(梁を使わずに柱と床だけで構成する方法)を全面的に見直し、検討を重ねた結果、杭に関しては摩擦杭から高支持力杭に変更したことで杭と鉄筋量を減らし、コストを抑えることができた。また、建物の枠組みとなる鉄骨の組み立てにクローラクレーンを2基使い、建物の外側からクレーン作業を行うことで基礎や床の施工といった内部の工事も同時に行い、工期を短縮した。
POSCO−JKPC(株)は、韓国の最大手製鉄企業である(株)POSCOの日本法人で、九州を中心とした西日本で展開している。(株)POSCOは日本の自動車企業への売り込みを強化する考えで、現在、響灘地区で寿工業(株)とアジア特殊製鋼((株)POSCOと寿工業(株)との合弁会社)の北九州工場を建設、4月に竣工した。すでに九州に1工場を保有・稼動しているPOSCO−JKPC(株)はこれを受け、新工場の苅田地区に、主に車体をつくるための鋼板を各自動車メーカーが求める大きさに切断するシャーリング加工を行う工場を設立する。
苅田地区は東が周防灘に面し、苅田港、北九州空港と輸送の便に恵まれていることから、自動車・セメント・電力等を中心とした臨海工業都市として発達してきた。豊富な石灰石資源を持つ日本有数のカルスト台地、平尾台を後背地に抱え、大正時代からセメント産業が盛んであったが、1975年に日産自動車が進出、九州工場が稼動すると、多くの自動車関連企業が相次いで立地、「自動車の町」として知られるようになった。自動車関連企業の進出は、今後も続くと見込まれている。
建設地はわが社が1979年〜1981年に施工した埋立地で、苅田臨海2号地(112ha)と呼ばれている。この施工経験から、埋立土砂の土質や在来地盤の状況、施工方法といった埋立地の状況に最も詳しい。また、苅田地区には50年間、常設事務所があり、どこに何があるのかなどの状況や、今後の展開(計画)についての情報にも通じており、これらをPOSCO−JKPC(株)に詳しく説明したところ、施工を任せていただけることとなった。
新工場の敷地面積は33,831uで、倉庫・加工棟と事務所棟を合わせた総延床面積は10,369u。施工にあたって当社は、求められる機能を落とさずにコストを抑える構造VE提案を行った。この提案のため、設計会社の協力も得ながら2日に1度の頻度で着工前の約1ヵ月間にわたり、検討会を重ねた。支店一丸となって取り組み、設定された床が耐えられる重さ(積載荷重)を減らすことなく、コストを抑える提案をPOSCO−JKPC(株)へ行い、これが受け入れられた。
建物を建設する際に打設する杭は、一般的には非常に固い地盤である支持層まで打設する。支持層まで打設すれば、その分長い杭が必要になるが、摩擦杭は表面の凹凸で地盤に触れる面積が大きくなり、受ける抵抗摩擦力も大きくなることから、支持層より浅い層でもしっかりと建物を支えることができる。
建設地は埋立地であることから、地表部分はやや柔らかいシルト(泥)層となっている。当初、杭打設にはBFK(BF-Kneading)工法を用いて中間層(砂・礫層)までの打設予定であったが、わが社はVE提案として、高支持力杭の埋め込み杭工法であるHiFB(High Friction strong Bearing Methood)工法を提案し、予定していた床部分の杭の本数を361本から242本にすることができ、積載荷重を変えることなく資材コストを抑えることができた。
さらに、建物は鋼板の加工工場で、材料の鋼材や製品が数百から数千t常時保管され、重量のある加工機械の設置されるため、当初の計画では、1uあたり10tの積載荷重が設定されていた。倉庫・加工棟の1階のスラブ構造を全面的に見直し、積載荷重を維持したまま、杭打設間隔を4mから約5mに変更、場所によって床のスラブの厚さや配筋の太さや組み方を変えてコストダウンを図った。
工場や倉庫の施工は、まず鉄骨を組んだ後に内部工事を行い、仕上げていく。工場が予定の4月から稼動できるよう、倉庫・加工棟の施工では、建物の枠組みとなる鉄骨を組みながら、床のコンクリート打設や機械設置部分の基礎築造など内部の工事を行う同時施工を行った。鉄骨の組み立てを待たずに内部工事に着手できるため、約1ヵ月の工期短縮に繋がった。
施工の流れをみると、建物の延長方向にA〜Cの3工区を設定、先行してA工区の内部工事を行い、B工区へ移動し、B工区で内部工事を行っている間に、クレーンでA工区の鉄骨組み立てを開始する、というように、内部工事を鉄筋組み立て工事が追いかける形で進められた。鉄骨の組み立ては建物の両側から挟む形での施工とし、クレーンレールを取り付けるため重さ5tもの梁があることから、120tのクローラクレーン1基、80tクローラ中型クレーン1基を使った。鉄骨の組み立て作業を先行すると、クレーンを使う大掛かりな作業というだけでなく、作業員の危険も高まるため、内部工事を先行することで、作業員の安全性を確保しつつ、効率的な施工を可能にした。
施工フロー
所長 中園次夫
約6ヵ月という短工期で完成させることができたのは、現場のチームワーク
はもとより、わが社の豊富な実績・ノウハウがあったからだ。
当工事の所長である中園次夫は「私も含め、職員全員が北九州での経験が長く、対応できると思っていました。これだけのスタッフでできるのは経験者の多い五洋だからこそでしょう」と自信をみせた。また、「土質の把握や施工で発生した土の処理地など、さまざまな面で土木部に相談し、解決しながら施工を進めることができました」と、建設地の埋立を担当した土木部との連携もあったことを明かした。
同時施工で行われた今回の工事では、1日あたり100人以上の作業員が出入りする状況だった。このため、中園は「上下作業(現場の上部と下部で同時に作業すること)にならないよう、朝礼や日々のミーティングなど、細かく確認しました。また、海が近い現場なので風が強いこともあり、事故を起こさないよう、安全に気を配りました」とし、1日3回、現場を巡回したという。
実は、今回の苅田加工物流センター建設にあたり、建設地の経験だけでなく、柳社長が、まだ(株)POSCOの新入社員だった頃、韓国で第2工場の建設があり、その際に応援として駆けつけた当社の名前を覚えていて下さっていたのだという。その期待に応えるため、支店、現場が一丸となって取り組み、無事に完成を迎えることができた。
小さな仕事でも、それが縁となり、巡り巡って戻ってくる事がある。お客様の希望以上の成果となるよう、一つひとつを丁寧に取り組むことは、実績や経験となって蓄積され、新たなお客様との出会いとも繋がる。臨海部での仕事はこうした信頼の積み重ねの上にもあるのだ。
工事名称 | POSCO−JKPC(株)苅田加工物流センター新築工事 | ||
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発注者 | POSCO−JKPC(株) | ||
施工者 | 五洋建設(株) | ||
工期 | 2008年10月1日〜2009年3月31日 | ||
設計・管理 | (株)大建設計 | ||
工事場所 | 福岡県京都郡苅田町新浜町9-24 | ||
工事概要 | 構造 | 倉庫・加工棟 | 鉄骨造1階建 |
事務所棟 | 鉄骨造2階建 | ||
建築面積 | 倉庫・加工棟 | 9,799.14m2 | |
事務所棟 | 339.16m2 | ||
延床面積 | 倉庫・加工棟 | 9,724.14m2 | |
事務所棟 | 645.02m2 |