このページは、ホームソリューション・技術プロジェクトプロジェクトストーリー島根原子力発電所3号機護岸工事のページです。
位置図
島根県松江市の日本海沿岸で、1974年より営業運転を行っている島根原子力発電所。既設の1号機、2号機に続き、2011年12月の営業運転開始を目指して、現在3号機の建設が進められている。1・2号機を合わせた電気出力は128万kW。3号機はそれを上回る137.3万kWと、その完成により同発電所の総出力は2倍以上となる。
3号機の建設に際しては海面の一部を利用。ただし、原子力発電所の建設工事では厳しい耐震基準が定められており、原子炉建屋などの主要構造物の基礎は埋立地の上でなく岩盤に直接構築しなければならない。そこで、護岸に止水機能を持たせるために長さ約640mの新設護岸を直接岩盤の上に構築し、海水を完全に堰き止めて背面側にドライ空間を創造、原子力発電所を建設するという計画が立てられた。そのイメージは、まさに「海の中にダムを造る」である。
ケーソン架台据付の様子(架台の底面は地形に合わせている)
通常、ケーソン護岸の建設では、海中に捨て石で土台を造り、その上にケーソンを据え付ける。しかし、当工事では、護岸に止水機能を持たせることから、護岸も直接、岩盤に据え付けなくてはない。当初の基礎設計では、海中に鉄筋を組んで基礎コンクリートを打設し、海底にコンクリートを固定する計画だった。しかし、施工性、工期、コストなどのあらゆる観点から検討を重ねた結果、海中でそのような施工を正確に行うのは困難と判断、止水機能とケーソンの滑動防止機能を持つ架台を海底に設置し、その上にケーソンを据え付けていくという方法を採用した。これなら、海中で行うはずだった難工事の一部を、陸上での作業に切り替えることができる。
架台は水中コンクリートの型枠として使われ、海底に設置後、架台の中にコンクリートを打設し岩盤と一体化。架台の上部にはゴム製の止水材(ミニゴムガスケット)が2列配置されており、ケーソンがそれを踏みつぶすことで、ケーソン底面での徹底した止水を実現する。
架台の底面は、海底の地形に合わせるため1基ずつ違う形状となっている。設置個所の海底の地形をマルチビームソナーで三次元測量を行い、それぞれの架台の高さを決定。また、架台の底辺部に取り付けた6ヶ所の油圧ジャッキをダイバーが海底で微調整することで、架台の水平を確保し、止水材位置の相対変異を1cm以内に収めた。
- 2004年5月
東護岸砕岩浚渫 - 2005年5月
東護岸ケーソン中詰砂投入
- 2006年4月
東護岸上部工施工と西護岸浚渫開始 - 2007年6月
東護岸ドライアップ完了と西護岸ケーソン据付
スリット柱据付の様子
日本海から護岸に打ち付ける波の対策も、遮水を完璧にするための重要な課題である。日本海特有の冬の高波とドライアップによる1.5気圧の水圧に耐えることができる構造物が要求された。もちろん、護岸の幅を広くするなどして、遮水精度を上げることはできるだろう。しかし、合理性を考え、スリット柱というコンクリート製の円柱と、波返しコンクリート壁を護岸上に設置することで、低コストでの越波対策を実現した。
まず、海側に3mおきに設置した直径1.5m、高さ2.5mのスリット柱が波の衝撃を和らげる。さらに、陸側にある高さ4.5mの波返しコンクリート壁が、スリット柱の間を通り抜ける波を受ける、という二重構造である。
一般的な護岸も耐波・耐震構造となっているが、今回は変位がまったく許されない止水構造の護岸であるため、従来のデータや計算式を参考にすることはできない。そこで、技術研究所で実際の1/60の大きさの模型を使って実験を3度行い、スリット柱と波返しコンクリート壁の、最も効果的かつ合理的な配置や高さ、大きさを追求した。
スリット柱は当社が独自に開発したものだが、さらにこの護岸上の構造全体が当社の研究と提案による成果である。
護岸自体が100年確率波(100年に1度の割合で起こると想定される高波)に耐えられる耐波性能を持ち、さらにこのスリット柱と波返しコンクリート壁により、「万一、大型の台風に襲われても、海からは水しぶき程度で抑えることができます」と同工事の所長である林耕三は話す。
「海の中にダムを造る」イメージで、護岸下の部分では、河川ダムの設計を参考にカーテングラウト※による止水方法を採用している。
護岸上に約1.2m間隔で穴を開け、そこから地盤を補強するグラウト材を地中に注入。護岸の下に、深さ約20mのカーテン上の遮水壁を形成するのである。これにより、地中からの海水の侵入もシャットアウトすることができる。
これだけの確かな品質を求められる大規模な工事について、林は「工事に30数年携わっていますが、これだけ厳しい現場は今までありませんでした。それでも着実に工事を進めて来られたのは、当社が海洋土木で培ってきた技術力と、臨海部での工事に精通した協力会社とともに発揮する施工力の賜物だと思います」と語る。
また、沿岸での工事のため、風や波が激しい悪天候の場合、作業を中止せざるをえない日もある。工期と戦う日々が続いたが、「現場での判断は、すべて当社の仕事。いつでも必ず『五洋の人間がいる』という状況を作り、あらゆる変化に即応しています。その点は、発注者様からも高く評価をいただいています」と林所長。さらに、「若い職員も、泣き言一つ言わずついてきてくれました。おかげで彼らもかなり成長したと感じています」と話す。
約3年の歳月をかけて2007年3月1日に東護岸のドライアップが完了。現在は、その背面側で3号機の建屋基礎工事が順調に進んでいる。西護岸工事のドライアップは、2009年12月25日に完了予定だ。
※カーテングラウト・・・ダム基礎岩盤にボーリング削孔し、セメントミルクを注入して設けたカーテン状の遮水部のこと
工事名称 | 島根原子力発電所3号機護岸工事 | |
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発注者 | 中国電力(株) | |
施工者 | 五洋・東亜・鹿島・東洋・森本 共同企業体 | |
工期 | 2003.12.24〜2009.12.25 | |
工事場所 | 島根県松江市鹿島町片句654-1 島根原子力発電所内 | |
工事概要 | 防波護岸 | ブロック被覆ケーソン式直立堤 延長 約490m ケーソン 16函 放水路貫通部 1函 |
湾内護岸 | ケーソン式直立堤 延長 約150m ケーソン 4函 |
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防波堤 | ブロック被覆ケーソン式混成堤 延長 約120m ケーソン 6函 |
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東防波堤 | ブロック被覆傾斜堤 延長 約160m |