ページの先頭です
ページ内移動用のリンクです



このページは、ホームの中のWhat's Newの中の2005年の中の洗える無菌室システムを三重大医学部付属病院に初導入のページです。

What's New

洗える無菌室システムを三重大医学部付属病院に初導入
〜産学連携で洗浄効果や耐久性モニタリングも実施へ〜

2005年04月26日

国立大学法人三重大学医学部(皮膚科長 教授:水谷 仁、所在地:三重県津市、Tel<病院代表>:059-232-1111)と五洋建設株式会社(社長:鉄村 和二郎、本社:東京都文京区、Tel<代表>:03-3816-7111)は、共同でこのほど三重大学医学部附属病院皮膚科病棟(病院長:内田淳正、所在地:三重県津市)に「減菌洗浄可能な無菌室システム」を導入しました。本システムは五洋建設が新感染症や院内感染対策用に開発した「洗えるバイオクリーンルーム」を応用して設置したもので、室内をそのまま洗浄できる清浄室の医療現場への実導入は日本でこれが初めてです。

医療施設では新感染症や院内感染を防ぐため、薬剤を使用して室内を殺菌処理したり汚染除去を行ないます。しかしながら、高濃度の薬剤は内装材によって壁や天井に薬剤が吸着し効果が不十分となることがあるうえ、人体に悪影響を及ぼす可能性もあり、薬剤の影響がなくなるまで室内利用は制限されてしまいます。そのため、室内をアルコール消毒でとどめる場合が少なくありません。
一方、高温の高圧蒸気洗浄はアルコール消毒より確実で、薬剤のような影響もありませんが、耐水性・耐熱性・密閉性が十分でなければ行なえないことから、室内を簡便に洗浄できる清浄室の開発が望まれていました。
五洋建設が2004年5月に開発した「洗えるバイオクリーンルーム」は、床面積が10m²から200m²程度と中小規模の診察室や隔離病室、簡易手術室、集中治療室を対象としたクリーンルームで、薬剤充填室や食品包装工程、工業用クリーンルームとしても利用可能な清浄室です。

今回、三重大学医学部附属病院皮膚科病棟に設置したのは、床面積19.5m²(幅3m×奥行き6.5m×天井高2.6m)の減菌洗浄可能な無菌室で、洗えるバイオクリーンルームの仕様を一部変更し、緊急処置を施した患者が二次感染防止用に入室するリカバリー室(ナースステーションの隣)として利用します。
室内は完全耐水型フッ素樹脂シートと熱硬化型樹脂シートで覆われ、高圧蒸気洗浄の際にも高い耐水性・耐熱性・密閉性を確保するとともに、温度・湿度・圧力の制御システムで、外部からの微生物や微粒子による汚染も積極的に制御します。

今回新たに集塵埃機能に加えて殺菌機能も持つ空気清浄ユニットと、洗浄可能な高精度医療用空調ユニットを開発しシステムに組み入れたほか、廊下との間に前室を設けて行なう差圧制御についても、風量制御を高度化した新たな制御方式を採用しました。また、室内照明や電源コンセントも防水・防滴仕様としており、高圧蒸気洗浄が困難な窓ガラスなどの部位にはクリーンコート処理による抗菌処理を施しています。さらに、塵埃付着防止として室内コーナー部全てに丸みを帯びさせました。

室内洗浄は患者が回復して退室後、ポータブル高圧蒸気洗浄機で80℃以上の蒸気を1時間程度噴射します。天井・壁・床は必要に応じて薬剤による洗浄も行なえるよう耐薬品性を有しています。

「減菌洗浄可能な無菌室システム」の構成内容

  1. 天井、壁に完全耐水型フッ素樹脂シート
    国内で唯一耐水性を持つ五洋建設独自のフッ素樹脂シートとテープを、天井、壁、継ぎ目に敷設しています。フッ素樹脂は最も純度が高く耐熱性のある四フッ化樹脂を採用し、 0.8mmのシート厚さで壁面材質にあわせた接着剤を使って接着します。本シートで耐汚染性、耐薬品性、清浄機能を実現します。
  2. 床に熱硬化樹脂シート
    床材には熱硬化型の厚さ1mmの樹脂シートを採用しています。80℃以上の高圧蒸気洗浄が可能であるとともに、高耐摩耗性があります。
  3. 空気清浄ユニット
    新開発の空気清浄ユニットです。酵素殺菌HEPAフィルター(空気中の99.97%の塵埃をとる機能を持つフィルターに殺菌効果を付加)、ファン、ダクトを一体化した空気清浄ユニットを室内の隅に設置し、常時・随時の空気清浄を行ないます。酵素殺菌HEPAフィルターを脱臭機能のあるフィルターに変更し、脱臭装置として使うこともできます。
  4. 高精度医療用空調ユニット
    新開発の高精度医療用空調ユニットです。リニューアルでは天井スペースが限定されていることから、床置きタイプとして機器本体は屋外、屋内の両方に設置可能です。室内空気は壁に設置した吸気口から酵素殺菌フィルターを経由して本体に取り込まれ、温湿度調整を行なってHEPAフィルターから室内に放射されます。空調ユニット本体内部は洗浄も可能です。
  5. 塵埃流入や細菌流出防止に差圧制御システム
    感染症病室やクリーンルームでは厳密な差圧制御が必要です。塵埃や細菌の流出入を防ぐためには、内装材の密閉性に加え室内外に一定の圧力差を設けます。差圧制御システムには体積制御方式を新たに採用し、ダクト内の静圧変化に応じて設定風量を保つ自力式機械構造としました。要求風量の変化に高速で追従できるので、扉の開閉にも追従した風量制御を実現します。
  6. 窓ガラスへの抗菌処理
    高圧蒸気洗浄が困難な部位、窓ガラス面についてはクリーンコート処理による抗菌処理を行ないました。

<三重大学医学部附属病院病棟内に設置の室内>


(クリックで拡大)

(クリックで拡大)
三重大学医学部付属病院
三重大学医学部付属病院
(クリックで拡大)
患者受け入れも開始
患者受け入れも開始
(クリックで拡大)

本システムの設置工事は3月末に完了し、システムの運転前後でリカバリー室の清浄度を計測したところ、清浄度に関する規格FED-STD-209D(6段階)でクラス100(最上位クラスから3番目のクラス、1立方フィートあたり0.5ミクロン以上の微粒子が100個未満)という高い清浄度が得られました。これは無菌手術室や手術用器具保管のための清浄度と同等のクラスで、医療用としては最上位レベルに、食品産業でいえば牛乳や乳酸菌飲料のクリーンルームに相当する清浄度レベルです。
患者の実際の入室は4月上旬から始まり、今後は三重大学医学部皮膚科が臨床の立場で、当システムの効果把握とデータ提供などをおこないます。

室内をそのまま洗浄できる無菌室を病院内に実導入したのは日本でこれが初めてです。新感染症や院内感染防止にこのような施設需要は今後高まっていくと考えており、三重大学医学部皮膚科学講座と五洋建設は引き続き共同でモニタリング結果を分析し、洗浄効果やメンテナンス性、耐久性などを検証していく予定です。



ページの終わりですページの先頭へ戻る