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地下鉄ダウンタウン線933工区工事(シンガポール)

トンネル坑内

慢性的な交通渋滞の解消と利便性ある国土開発に向けて

当社の東南アジアにおける一大拠点であるシンガポール共和国は、シンガポール島と60以上の小さな島から構成されている。その面積は約714km2(東京23区と同程度)で、国内の主要交通機関は、路線バス・地下鉄を含む鉄道及びタクシーである。シンガポール政府は中心市街地での慢性的な交通渋滞・駐車場不足に対処すべく、鉄道網の整備に力を入れており、長期計画に基づいて鉄道建設工事が順次発注されている。
地下鉄ダウンタウン線はシンガポールで5番目の地下鉄営業線で、第1期から第3期に分かれて建設されている。第1期工事は2008年に始まり、第3期工事は2017年に完了予定である。当営業線はシンガポールの東部・マリーナ地区・北西部を結ぶものであり、路線総延長は42kmである。開通後は1日約50万人の利用を見込んでいる。
当社が施工するのは、地下鉄ダウンタウン線第3期工事の一工区で、地下鉄駅舎1ヶ所(ベンデミーア駅)および隣接駅間を結ぶトンネル4本を施工する。

  • 現場位置図現場位置図
  • TBM工概要図TBM工概要図
  • 完成パース ベンデミーア駅地上出入口完成パース ベンデミーア駅地上出入口
  • 完成パース ベンデミーア駅プラットフォーム完成パース ベンデミーア駅プラットフォーム

泥土圧式TBMを4台投入してトンネルを掘削

TBM(Tunnel Boring Machine)TBM(Tunnel Boring Machine)

当社はドイツのHerrenknecht(ヘレンクネヒト)社製外径6.6mの泥土圧式TBM(Tunnel Boring Machine)を採用。4本のトンネル部(内径5.8m)を4台のTBMで施工している。トンネル延長の最長区間は1,230mで土質条件も類似していることから、2台のTBMで施工することも十分可能であった。しかしながら、早期開業を目指す発注者からは、隣工区の遅延リスクを軽減し、工期の短縮を図るためTBM4台での施工を条件づけられた。
トンネル延長の約70%がN値50以上の洪積層で構成されている地盤であり、洪積層の粒土構成は砂分が65〜85%を占め、その組成は長石と石英が大部分を占めている。そのため、カッタービットの摩耗・損傷状況を把握するために約200mごとに点検を実施し、必要に応じてカッタービットの交換を行っていく。
※N値:地盤の強さを示す指標の一つ。標準貫入試験で求められる値で、値が大きい程強固な地盤である。

トンネル覆工に用いるセグメントは,シンガポールでは初採用となる鋼繊維補強セグメントである。日本では、鋼繊維補強セグメントの採用例はあるが、鋼繊維と鉄筋が併用されており,当工事のように鋼繊維のみを使用したセグメントの施工実績は無い。鋼繊維補強セグメントは欧州を中心に採用され、近年ではオーストラリア・中国等でも採用されている。本工事で使用する鋼繊維補強セグメントには鋼繊維を40s/m3、耐火性能向上用のポリプロピレンを1s/m3を添加しており、トンネル4本で3,220リングのセグメントを使用する。

  • 鋼繊維補強セグメント鋼繊維補強セグメント
  • セグメントに配合されている鋼繊維セグメントに配合されている鋼繊維

4台のTBMは今年3月より順次発進し、現在は全てのTBMが稼働している。現在、TBMは最大日進約8.5mで掘進しており、2014年秋には4本全てのトンネルが完了する予定だ。

駅舎部は、地下4階・地上1階のRC構造物で、延長262m、掘削深さは最大約31mとなる。土留壁はRC地中連続壁で、5段の土留支保工を架設し施工する。駅舎部は仕切壁によって4分割されている。西側発進立坑、連絡通路部、ベンデミーア駅舎部、東側発進立坑に分けて駅舎部を構築している。これは、トンネル工事・駅舎構築工事が干渉することなく並行して作業できるように配慮したものである。本駅舎部は、当工事の後に施工される軌条設備工事の資機材投入の起点になる。

近隣住宅地への影響を最小限に抑える

補強工事を施したShop House補強工事を施したShop House

シンガポールにおいても日本と同様、近隣への工事の影響を最小限に抑えるための努力は欠かせない。
トンネルは交通量の多い道路の直下を掘り進んでいくため、小さなミスが大きな事故につながりかねない。その為、トンネル変位計測、地下水位計測、地盤沈下計測など細かな計測管理を日々行っている。
毎朝、発注者及びコンサルとミーティングを行い、前日の掘進データおよび計測データを整合させ、大きな事故につながる可能性の芽を事前に摘み取っている。さらに、各計測項目には管理基準値が設定されており、基準値を超えた場合には計測システムから自動的に施工者・発注者およびコンサルの担当者にオンラインで通報されるようシステム化されており、不測の事態に備え万全の態勢を整えている。また、西側トンネル沿線にはShop Houseと呼ばれる1階が商店、2・3階が住居の古い低層建物が多く、場所によってはトンネル掘進時の地表面沈下による建物への影響を防ぐため、建物の補強を実施している。

汚濁監視システム付濁水プラント汚濁監視システム付濁水プラント

環境面においても、シンガポールでは日本と同様、厳しい規制がなされている。騒音抑制についても、境界部への防音壁の設置、ガントリークレーンなど長期間使用する機械への防音対策などを行うとともに、騒音計で自動計測したデータを事務所サーバおよび監督官庁とオンラインで接続し、常時監視をしている。また、排出水も同様に濁水プラントに設置した汚濁監視システムで自動計測したデータについても同様の方法で常時監視を実施している。

シンガポールとともに成長を目指す

工事所長 荒木俊雄工事所長 荒木俊雄

ダウンタウン線3期工事は、当社を含む日本4社・韓国6社・中国2社・欧州3社・地元1社が施工を行っている。
当工事の工事所長である荒木俊雄は、「当社の工区が次に施工される軌条設備工事の起点となるので、当社の施工が早期開業に向けてのカギとなります。他工区の同じ日本勢に負けられないのと同様に、他国の建設会社に対しても負けたくないという強い気持ちで着実に仕事に取り組んでいきます。」と強い決意を語る。また、荒木にとってこの現場が工事所長としての初めての現場だ。「初めて工事所長となった現場がTBM4台を動かす大変な現場ということも、土木屋冥利に尽きます。おそらく、これから4倍の苦労をすると思いますが、逆に4倍の貴重な経験が出来ると前向きに捉えています。また、今いる11名の日本人スタッフとともに、このプロジェクトを無事成功させ、ひとまわりもふたまわりも大きく成長できればと思っています。」と微笑みながら語っていた。

シンガポール政府は今年1月、地下鉄網をさらに整備する計画を発表した。現在の営業距離約180qを2030年までに約360qまで整備し、ニューヨーク市に匹敵する地下鉄網を築く計画だ。シンガポールの建設投資意欲は益々旺盛で、その成長はとどまることを知らない。シンガポールで50年の歴史を誇る当社はシンガポールにおける「ナンバーワンコントラクター」を目指し、この国とともに更なる成長を目指していく。

工事名称 Contract 933 - Construction and Completion of Jalan Besar Station and Associated Tunnels For DownTown Line Stage 3
工事場所 シンガポール共和国
工期 2011年 8月26日〜2016年12月30日
発注者 Land Transport Authority of Singapore
施工者 五洋建設(株)
工事内容 開削による発進立坑および駅舎構築 開削部延長262m
TBM掘進工 東側トンネル 1,230m×2本
西側トンネル 1,120m×2本
避難用立坑構築 2箇所


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