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下新川海岸生地透過型有脚式突堤工事

侵食防止と高波被害の軽減にVHS工法を採用

施工場所

富山県の下新川海岸で、当社の特許技術であるVHS工法による透過型有脚式突堤の工事が進んでいる。
この突堤の完成により、日本海特有の荒波による海岸の侵食防止と高波被害の軽減を実現する。
既設の2基もわが社が整備し、今回の工事では前回も採用したローラー式の導材を使用して杭の鉛直精度を確保しているほか、新たに船舶動揺解析やCCDカメラによるモニタリングなど最新の技術により、施工品質・管理を向上させている。

VHS工法は幅広い波の変化に対し、安定した消波機能や海水交換機能などを備え、波浪特性や地形に応じて経済的な設計が可能である。
さらに、複数の施工の実績を経て、従来よりも高い耐波性能とコストダウンを可能にした「S-VHS工法」が開発されている。この新工法は、2008年12月に財団法人土木研究センターより建設技術審査証明書を取得した。

効果実証が早期整備を後押し

下新川海岸地区の高波浪

VHS工法が採用された当現場は、黒部市生地鼻の下新川海岸西端、日本海と富山湾の境界となる尖端地にあり、長年にわたる海岸侵食が問題となっていた。
そこで浸食対策として突堤の整備が計画され、2002年に技術・設計・施工を提案したデザインビルド方式により1号堤が、続いて2004年に詳細設計付方式により3号堤が完成した。

2008年2月、冬型低気圧による高波浪が発生し、海岸沿いの民家が甚大な被害を受けたが、この災害で、1号堤と3号堤の背後地では被害が最小に抑えられ、その能力を大きく発揮した。これを受け、「浸食だけでなく防災面からも突堤の整備を急ぐべき」との地元の強い要望が寄せられたことにより、被害状況から計画を見直し、1号堤の北側に0号堤、南側に2号堤を整備することが決定した。

ブロックの形状などを1つひとつ緻密に設計

VHS工法はスリットを設けた透過構造で、背後域を広く守りながら海岸下流域の浸食を防ぐ。また、集魚効果や、海面からわずかに突出するだけのため景観も損ねないなどの様々な特徴を備えた技術だ。

突堤は7個のブロックで1基とし、延長は50メートル。水深に合わせてブロック1個を3〜5つのピースで構成する。今回の0号堤では25個、2号堤では26個のピースを使用している。工事所長の吉田隆一は「生地は海底地形が複雑で、設計条件が著しく異なるため、ブロック(ピース)の形状や配筋、杭の長さや本数など1つ1つ緻密かつ合理的に設計されています。1つも同じものはありません」と話す。

  • ブロック製作ヤード。同じ形のピースは一つもない
  • ブロック据え付け状況

解析・モニタリング技術を新採用し施工精度アップ

工事所長の吉田隆一と吉保範明

施工は、現場でブロックを支える鋼管杭を打設、その上に杭を通す穴のあいたコンクリートピースを重箱のように積み上げていく。吉田とともに1号堤から施工に携わってきた監理技術者の吉保範明は「経験や勘に加えて最新技術を融合させることで、より一層の品質向上を図っています」という。例えば鋼管杭の鉛直精度確保のため4点ローラー式の導材を前回の工事に続いて採用した。

これに加え、今回の工事では新たに船舶動揺解析を採用。事前に波浪統計データの分析と船舶動揺解析を実施。杭打ち作業への影響を考慮した上で作業中止基準を定めた。
また、杭先端には爪のような金具を取り付けることで、急斜面での杭が滑らないように工夫した。さらに、従来の杭の誘導に加えて、高感度CCDカメラを取り付け、無線LANを使用して画像を作業船にとばし、オペレータが直接モニタリングすることで、杭の精度を向上させた。これらにより、安全かつ高精度な杭打設を可能にしている。

鋼管杭を垂直に打つ工夫

  • 前回の工事から続いて採用している4点ローラー
  • 急斜面でも杭がすべらないように杭先端に取り付けられた金具
  • 作業船のクレーンオペレータ室でCCDカメラ映像をモニタリング

性能確保ながらコンパクト化し、施工性・経済性を向上

2008年に建設技術審査証明書を取得した「S-VHS工法」は、「VHS工法」を耐波浪安定性や経済性の向上を目的に改良・開発したもの。
技術研究所と本社土木設計部が開発を進めてきた技術で、堤体の上部を斜面にすることで、従来工法に比べて次の特徴がある。

  • 1) 高い耐波安定性 波力を上方へ分散することで水平波力の低減と鉛直下向きの荷重を与えることで堤体の安定が図れる。
  • 2) 消波性能 常時作用する消波対象波に対しては、斜面スリットからの流出入による乱れなどが作用して、VHS工法と同等の透過率0.6以下反射率0.5以下を満たしている。
  • 3) 経済性 堤体を支える鋼管杭やコンクリートの材料を大幅に削減できるので、工事費は約10〜20%削減できる。
  • VHS工法
  • S-VHS工法

S-VHS工法のメカニズム

災害大国・日本で次代の活躍に期待

1号堤の整備から工事に携わった工事所長の吉田は「工事が完了すれば、2008年のような自然災害を防ぐことができます。最後まで気を抜かずにやっていきます。その後は、この現場で働く若い職員達が各地で力になっていくでしょう」と、次代を担う中堅・若手職員に期待とエールを贈る。

わが国は災害大国として、高度な防災技術は世界的にも知られるところだ。それでも近年の異常気象による災害にみられるように、まだまだ対策が必要な地域は多い。当社には、ただ建物や構造物を造るだけでなく、国土や国民を守る防災技術がある。これからも、さらなる技術研鑽に努めていくことが、また次代へとつながる好循環を生み出すだろう。

工事名称 下新川海岸生地透過型有脚式突堤工事
発注者 国土交通省北陸地方整備局
施工者 五洋建設株式会社
工期 2008年11月1日〜2009年10月31日
工事場所 富山県黒部市生地地先
ブロック製作工:富山県下新川郡入善町芦崎地内
工事内容 透過型有脚式突堤工 50メートル×2基
減勢工 10メートル、40メートル


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