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広島港港湾環境整備局事業

廃棄物処分場の要である遮水工事を施工

位置図位置図

広島県が推進している港湾整備プロジェクト「広島ポートルネッサンス21事業」において中心地域の1つである出島地区では、廃棄物処理施設の整備が進められている。埋立地約130haに計画されている緑地部分約18haに整備されるもので、廃棄物処分場の要である遮水工事を2007年12月より、当社JVが施工している。

 この処分場は、近年、五日市処分場の残量が少なくなったことから整備するもので、遮水シートを採用して、複雑な形状を施工するという特徴がある。当工事においては、形状に合わせた4つの方法で工事を展開することで、複雑な形状を打開し確実な遮水を実現している。

複雑な護岸形状にシート2層の遮水構造

広島ポートルネッサンス21 完成予想図広島ポートルネッサンス21 完成予想図

今回の工事は、護岸の側面に遮水シートを2回繰り返して敷設する2層構造で遮水する。遮水シートには、塩化ビニルシートに比べて引張・引裂や、対微生物性などに優れるLLDPEシート(直鎖低密度ポリエチレンシート)が採用されており、LLDPEシートを用いた海面処分場としては日本初となる。

遮水シート1層あたりの工事の流れは、まず敷き詰められた石の上に保護材(固化処理土)を覆い、保護マット(不織布)に挟まれた遮水シート(一体化構造シート)を敷設、またその上を保護材(固化処理土)で覆う。

しかし、処分場整備は当初の埋立計画にはなく、埋立施工の途中で計画が立ち上がったため、西側の既成護岸は基礎地盤改良時に不透水性地盤となるように施工されておらず、新計画部分の護岸形状とは異なる。既成護岸では、より厳重な遮水を実現させなくてはならないうえ、固化処理土の厚みは50cmに保つことが求められている。これを実現し、かつ構造物を安定させるため、固化処理土の打設にあたって、4つの方法で施工することになった。  

廃棄物処分場計画地廃棄物処分場計画地

4つの方法で複雑な形状を打開。試行錯誤を重ねて施工。

その4つの方法とは、1.布製型枠内打設(現位置打設)、2.袋詰マット内打設、3.直接打設(水中)、4.直接打設(気中)であり、施工する場所の形状によって、それぞれ適した方法を使う。

1.布製型枠内打設(現位置打設)は、袋状の布製型枠を、クレーン台船と潜水士により敷設し、その後保護材を4段階に分けて注入する。急斜面で気中からの打設が可能な部分に適用し、敷設断面が広くても低コストで効率的に施工できる。

2.袋詰マット内打設は、台船で布製型枠に保護材を入れたマット状のものを施工箇所に敷く。急斜面で気中からの打設が難しい部分に適用。

3.直接打設(水中)と4.直接打設(気中)は、平坦な場所や緩やかな斜面で、護岸と接する部分(気中)や、海中の部分(水中)を直接打設船で施工するもの。この打設船は、今回の工事のために製作されたもので、船に取り付けられた角柱状の打設シャフトの上部から固化処理土を流し込み、ところてんのように押し出して打設する。固化処理土は粘着力が高いので平坦な場所であれば型枠を用いらなくても施工可能で、低コストでできる。

布製型枠を用いた打設では、型枠とはいえ布製のため、打設の速度などによっては破れてしまう可能性があり、慎重に施工を進める必要があった。事前の検討時に、保護材を流し込む速度や養生、打設の順序を確立させるにあたり、工事総括所長の加納俊美は「試行錯誤の繰り返しと、実験を経て、形状など、改良を重ねて施工しました。発注者や関係機関と、打ち合せに要した時間は計り知れません」と述べる。実際の施工には、型枠の強化を行ったことで順調に施工を進めることができた。
既設護岸の遮水構造

工事総括所長 加納俊美工事総括所長 加納俊美

遮水シートを敷設する際は、シートにしわや緩みがあると破水の原因となってしまう。このため、隅角や異形箇所の断面が変わるところを中心点として扇状にシートを敷設することで、しわや緩みを防いだ。当社は四国の川之江市西部産業廃棄物最終処分場で遮水シートを使用した施工実績があることから、当時の担当技術者を招き、そのノウハウを活かしている。また、事前に模型や3次元CADを用いて、入念な検討を行った上でシートを割付し、必要に応じて敷設断面も変更。実施工でも距離を実測し、調整ができるようにシートを延長して設け、難しい形状にも対応している。

 

加納は「どんな工事でも難しいと思っていたら、何もできません。できるんだと思ってやらなければなりません」と述べつつ、施工にあたっては「発注者、関係機構、協力会社が一緒になって取り組めば、様々な知恵を集めた結果として、いろいろな形になって現れてきます」と一丸となって施工にあたることが成果に繋がるとしている。

 

手作りの模型で工事を分かりやすく説明

工事について、地元住民の理解を得るため、発注者が工事の進行状況等をまとめた資料を毎月配布し、3ヶ月に1度、地域の方々へ説明会を開催しているが、わかりやすく工事内容を伝えられるよう、現場では資料作りだけでなく、手作りの模型を提供するなど、当社も積極的に協力している。

また、工事船舶や建設機械の集中稼動は行わないようにして、周辺地域や環境に配慮している。始業前・月例・年次の点検で性能維持に努め、整備不良による大気汚染、粉塵、油漏れなどの発生を防いでいるほか、空ふかし運転や高負荷の運転も極力避けることで、騒音抑制も図っている。さらに、保護材(固化処理土)の施工時には施工前、施工中、施工後のそれぞれの段階で連続1週間、pH測定を行い、水質への影響を把握するとともに監視している。

長年にわたる貢献が新たな受注に発展

工事は03年度の地盤改良から始まり、護岸となるケーソン・ブロックの製作・据付の後、06年度から遮水工事に突入した。当社はこの地盤改良や、今回より以前に発注された遮水工事も受注しているだけでなく、出島地区で工事を受注した元請・協力会社で構成する出島地区安全対策協議会の会長として、長年にわたって処分場の整備に携わってきた。

今回の工事は09年3月に完成を迎えるが、その他の全ての工事が終了した後、11年度中に廃棄物の受け入れを開始、約10年間で廃棄物による埋立を完了させ、上部を良質な土で覆い、跡地を緑地とした親水空間としての利用が予定されている。

加納は「五洋建設がリードしていかなくてはならない、という意識をもって仕事に携わってきました。難しい工事でも、たゆまない強い気持ちがあれば可能になり、ひいては信頼を得ることに繋がります」と語る。今回の工事では、発注者の期待に応えるため「目配り、気配り、心配り」をモットーに取り組んでいる。

出島地区で得たノウハウは、新たな受注へと繋がり、同時に、技術や仕事にかける思いとともに、将来を担う中堅や若手へも確実に受け継がれていく。お客様にとってオンリーワンとなる姿勢、どんな工事でも柔軟に対応し、誠実に応える姿勢が、「臨海部ナンバーワン企業」をより確固たるものにしていくだろう。
工事名称 広島港港湾環境整備工事(出島地区19-4工区)
発注者 広島県広島港湾振興局
施工者 五洋・東亜・伏光 広島港出島地区19-4工区工事共同企業体
工期 2007.12.19日〜2009.3.13
工事場所 広島県広島市南区出島2丁目地先
工事概要 遮水シート端部遮水工
・水中不分離性コンクリート打設工 V=4,770m3
・アスファルトマスチック打設工 V=1,616m3
遮水シート保護工
・固化処理土打設工 V=24,513m3
・一体化構造シート敷設工 A=13,022m3
裏込工
・裏込材投入工 V=96,200m3


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