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フジトランスBQ桟橋工事(愛知県)

年間稼働率90%の桟橋を、急速施工で拡張

顧客業務への影響を抑え、「居ながら施工」で工期短縮。

位置図

日本の主要な国際貿易港(五大港)の1つであり、2007年11月に開港100周年を迎えた名古屋港。2004年7月に伊勢湾内のスーパー中枢港湾として指定された同港は、自動車関連品種をメインに、国内主要港貨物取扱量が5年連続で第1位、国内主要港貿易額も6年連続で第1位を誇る。

(株)フジトランスコーポレーションは名古屋港から国内外の各地に自動車を始め、各種荷物の海上輸送を行っており、その自動車関連の積み出し基地であるBQ桟橋を、荷役効率の向上と船舶の大型化に対応するため、拡張することとなった。

同桟橋には、1日当たり4、5隻の自動車運搬船が桟橋に接岸している。年間の稼働日数が約340日で、荷役業務を休止する期間は年末年始やゴールデンウィーク、夏季しかない。そのような状況下で、当工事は既設桟橋の北側に長さ120mの桟橋を拡張する。

既設桟橋での荷役業務に支障なく工事を進め、しかも拡張桟橋の早期利用を可能にすることが当初からの課題だった。

工事所長 橋本 成輝

当工事の工事所長を務める橋本成輝は、「桟橋が稼働する中で工事を進める、いわゆる『居ながら施工』でも、ここまで稼働率の高い桟橋の真横で施工を行うケースは、臨海部での実績が豊富な当社でもほとんど前例がありません。完成した時に使いやすいものを短期間に高品質で、なおかつ無事故で仕上げるという大きな課題をどのようにしてクリアするか、名古屋支店の土木部・設計課と現場が一体となり、事前調査と設計、施工計画の策定を一括で手掛けました。そして、PCa工法やプレストレストコンクリート(PC)桁の採用、浚渫と鋼管杭打設にアンカーレスの作業船を駆使するなどの方針を固めていきました」と説明する。

PCa工法とPC桁の採用により、品質を保持しながら工期短縮を図る。

工事内容は、桟橋拡張のために、海底を46,750m3ほどグラブ船で浚渫し、直径1,200mmの鋼管杭を88本、1,000mmの鋼管杭を4本打設。その上に長さ15mの受梁コンクリートを24基、さらに計387本の桁を施工して桟橋を構築するというもの。

まず、部材の品質確保と工期短縮を図るため、受梁コンクリートと桁の施工についてはPCa工法を採用した。

さらに、桁は、プレストレストコンクリート(PC)で製作。コンクリートには、圧縮力に強く引張力に弱いという特性がある。それを踏まえ、予めコンクリート部材に圧縮力をかけた状態にし、荷重を受けた時にコンクリートに引張応力が発生しないようにしたものが「プレストレストコンクリート」である。鉄筋コンクリートよりも、引張応力によるひび割れに強く、長期的なメンテナンスの費用削減にも貢献できる。

工事所長代理の盛 英によると、「受梁コンクリートとPC桁は工場および陸上ヤードで一括製作するので、その場でコンクリートを打設するより高水準の品質が期待できます。また、PC桁は強度があるため、通常よりも鋼管杭のスパンをあけて架設することができ、杭の本数と杭打ちの作業を軽減できるというメリットもありました」と語る。

アンカーレスの船で作業占有面積を最小化と、高精度の夜間鋼管杭打設を実現。

浚渫と鋼管杭打設の作業は、大型海上作業船団により行った。もちろん、既設桟橋に就航する船舶や港内を航行するすべての船舶に作業の影響を与えてはならない。

浚渫に際しては、作業占有域や航行船舶への影響を最小限に抑えることができるため、アンカーレス浚渫船を採用した。また、浚渫工事は既設桟橋への接岸がない夜間に行った。寒さの厳しい冬季の夜間作業となったが、夜間は作業域内の船舶の航行がなく、工事を中断する必要がないため、工事は順調に進められた。

そして、鋼管杭打設作業。船舶が桟橋に接岸するたびに作業を中止すれば1日2本程度しか鋼管杭を打設できなかったところを、1日6〜7本のペースで杭打ちを行った。通常であれば、海底にアンカーを打ち、ワイヤーを張って作業船を海上に固定する。しかし、ワイヤーが他の船舶の航行を妨げる可能性があるため、アンカーを利用しなくても作業に対応できる自己昇降式台船(ハーフSEP杭打船)を採用した。このハーフSEP杭打船は、「スパッド」と呼ばれる4本の鉄柱を船体から海底に打ち込み船体を固定させ、海上での作業を行うものである。

拡張・既設桟橋の工事領域から船体が航路側へはみ出すことがないため、やはり航行船舶への影響はほとんどない。夜間14日間で、鋼管杭92本の打設を完了した。

現場スタッフにとって経験のない夜間の打設作業だったが、スパッドで船体を固定できる作業船を採用したことで鋼管杭の打設位置の精度を最大誤差40mm、平均誤差14mmに抑えることができた。これは、受梁コンクリートの据付精度の向上にもつながっている。

荷役業務休止中の4日間に受梁の据付を完了、PC桁は陸上から架設。

プレキャスト受梁・24基の据付は、300トン吊りクラスの大型起重機船により海上作業で行った。こちらは、既設桟橋での荷役業務が休止となるゴールデンウィークの4日間で一括施工した。

連休が明け、桟橋が稼働を開始してからは、PC桁の架設作業に入った。船舶が就航すると、海からの作業は難しくなる。そこで、クレーンによるPC桁の架設を、海上ではなく陸上から行うことにした。100トン吊りのクローラクレーンを使用し、すでに架設を終えたPC桁の上を走行しながら、その先に順次PC桁を架設していくという特殊な施工方法である。陸上作業としたことで、作業効率と架設精度の向上を図ることができた。このような取り組みにより、顧客業務への支障を最小限に抑えながら、わずか8日間で304本のPC桁架設を無事に終わらせた。

施工フロー

  • 1. グラブ浚渫
  • 2. 鋼管抗海上打設
  • 3. プレキャスト受梁海上据付
  • 4. PC桁陸上架設
  • 5. 緊張工(PC桁の一本化)
  • 6. 完了(付帯設備設置)

強みは、五洋の歴史を熟知する協力会社とのチームワーク。

桟橋拡張工事は、2007年8月で完了。当初の計画より3.5ヶ月工期を短縮できた。その結果、発注者も予定より早く拡張桟橋を利用できるようになる。

工事を回想しながら、橋本は、「毎日船が出入りする狭い桟橋に、たくさんの業種の作業員が集まるため、互いに融通し合いながら作業を進めなければなりませんでした。現場にクレーンは1台しか入れませんが、支保工をはじめ、型枠を造る人、鉄筋を組む人など、全員がクレーンを使いたい。そこで、名古屋支店の歴史をよく知り、顔にも馴染みのある協力会社の人材を厳選して、円滑で良好なコミュニケーションを図りながら施工に当たりました。それもこの工事の強みになりました」。

厳しい条件を克服し、桟橋拡張工事の品質確保と工期短縮を実現した背景には、臨海部における当社ならではの技術力、施工力はもとより、現場、支店、協力会社が一体となったチームワークが活きていたのである。

名古屋支店 土木部
部長小西 規之

今後も得意分野への積極的な参画で、「臨海部ナンバーワン企業」へ邁進。
今回の工事にあたっては、現地作業を可能な限り減らし、発注者様の荷役作業を妨げないことを第一とした工法を立案・計画しました。それが机上のプランとならぬよう、支店、現場所長との意見・情報交換を行い、密接に連携して情報提供・共有を図り実現可能な工事計画へと高め、実践しました。結果、夜間における鋼管杭打設のノウハウ、桟橋構造の大幅なプレキャスト化に関する設計・施工の新たなノウハウが蓄積されたと感じています。
また、円滑な世代交代施策の一つとして、現場には次世代の所長となるべき若手職員が重点的に配置されましたが、本現場での経験が将来大きく活用されていくと思います。
今後も臨海部での事業に積極的に参画し、「臨海部ナンバーワン企業」の具現化を目指します。
工事名称 フジトランスコーポレーションBQ桟橋拡張・改修工事
発注者 (株)フジトランスコーポレーション
施工者 五洋・フジトランスエーエム建設共同企業体
工期 2006.7.28〜2008.5.30
工事場所 愛知県名古屋市港区潮見町37番地47地先
工事概要 浚渫工 グラブ浚渫46,750m3
杭基礎工 管杭打設 ø1200:88本、ø1000:4本
受梁工 プレキャスト受梁 L=15m 24基
PC桁工 387本(桟橋部304本、渡橋部70本、乗越道路13本)
付帯設備工・乗越道路工・既設桟橋改修工一式


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