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寒川東部臨海土地造成工事(愛媛県)

遮水技術を複合的に駆使し、環境に配慮した海面処分場を形成する。

全国一の「製紙の町」に、大規模な産業廃棄物処分場を建設。

位置図

製紙、紙加工業で日本屈指の生産量を誇り、製紙工業の出荷額は全国一を誇る愛媛県四国中央市。本工事は、寒川町・具定町地先の瀬戸内海沿岸域水面に19.4haの土地を造成する事業で、北側11haで140万m3の容量を持つ管理型廃棄物処分場を、南側8.4haの一般埋立地の中には4万m3の容量を持つ安定型処分場、および再開発用地・親水緑地・緩衝緑地用地を造成する。

管理型廃棄物処理場には、同市の瀬戸内海沿岸に建ち並ぶ大手製紙会社の工場から運ばれてくるペーパースラッジ(製紙カス)が投棄され、最終的には埋立地として生まれ変わる。三方を瀬戸内海に囲まれているため、環境保全の見地から高い遮水精度が求められる。

そこで、当社が開発した「クレイガード工法」をはじめとするさまざまな遮水技術が駆使され、2008年3月の竣工に向けて土地造成が進められている。

工事全景(クレイガード打設の様子)

追随性に優れ、施工後は杭打ちも可能なクレイガード。

クレイガード材

クレイガード工法とは、浚渫などで発生する海成粘土に、間隙調整材(ベントナイト)やゲル化材(ケイ酸ソーダ)を添加混合した材料を用いて、遮水構造物に変形追随性を持たせる工法である。

一般的に底面をシートで遮水した埋立地の場合、後に建造物を建てる際、杭打ちによりシートが破れて浸水する可能性があるため、その後の利用用途が限定される。しかし、変形追随性を特徴とするクレイガードなら、杭に巻きつくように安定し、遮水性能を保ち続けるという利点がある。また、浚渫土をリサイクルすることから、環境保全にも貢献する工法である。

当工事では、新居浜地区航路の浚渫で発生した海成粘土と、現場内で浚渫した粘性土の一部を、陸上プラントでベントナイトとケイ酸ソーダを加えて練り合わせた。でき上がったクレイガードは、処分場予定地の海上に浮かぶ台船へパイプラインで圧送され、水中で分離等を起こさないようにトレミー管で海底に打設、1日1、500m3のクレイガードを、2ヶ月強にわたり打設した。その上にジオテキスタイル(網状のポリエステルシート)を敷設し、その上に転炉スラグ(鉄鉱石のカス)を均等に均した。これは海底面からの揚圧力に対抗するためである。こうして、合計9万m3、平均の厚さ2mの遮水層が管理型廃棄物処理場の底面に形成された。

同工事現場の所長である井上壮臣は、「遮水工法は他にもありますが、本工事でクレイガード工法が採用された理由は、長期止水性や施工性、そして経済性等を総合的に考えてのもの。また、国が取り組んでいる資源のリサイクルというビジョンにも合っていたことから受け入れられたものと考えます」と話す。

環境問題が叫ばれる時代にあって今後は熱い注目が集まることが期待される、当社のブランド技術である。

透水係数を達成するために、クレイガードの品質を徹底管理。

操作室の様子
常にモニターで遮水材の品質をチェックし、異常時にはポンプを即停止する

遮水材の性能は、透水係数(水の通りやすさを表わす指標)で表す。同現場では、クレイガードの透水係数を1×10-6cm/秒※1以下に保つことを目指した。1×10-6cm/秒であればクレイガードの厚さが1.6mで済むものが、1×10-5cm/秒※2では同じ遮水性能を持たせるのに5mの厚さが必要となる。底面の厚さが3.4mも増えたら、産業廃棄物最終処理場全体の容量は激減するため、透水係数の維持には細心の注意を払った。

そこで、クレイガード混練りプラントの中に、最新の機器を導入した操作室を設置。あらゆるプロセスで、粘性土の密度計測、含水比などを監視し、クレイガードの品質管理に努めた。

透水係数と合わせて、せん断強さを1kN/m2前後に保たせることも目指した。せん断強さとは、縦に加わる力に対する強度を示すもので、これが低いと遮水層が大きく変形し、高すぎると杭の打設が困難になる。長期的な耐久性を固持し、杭打ちにも対応できる遮水層を形成するためには、適正なせん断強さを実現することが重要である。

このような徹底した管理で、クレイガードの品質は守り続けられた。しかも、打設したクレイガードの上に比重の重い転炉スラグを覆砂したことで、さらに上から圧力が加わる。その作用により、遮水層としての機能は、実質的に約10-7cm/秒※3相当まで高まっている。

  1. (※1)1秒間につき1/100万cmの透水率。
  2. (※2)1秒間につき1/10万cmの透水率。
  3. (※3)1秒間につき1/1千万cmの透水率。

側面の鉛直部に、遮水鋼矢板と遮水シートを国内で初採用。

当工事ではクレイガード工法に加え、いくつかの遮水技術が採用されている。海側の3面は、鋼矢板護岸で囲まれるが、そこには遮水鋼矢板(Jポケットパイル)と、鉛直遮水シートを国内で初めて採用した。

遮水鋼矢板は、嵌合部に遮水材の設置や充填材の注入が行えるポケット部が設けてある。海底地盤の遮水は、ポケット部分に予め膨潤性止水ゴムを装着して打設すると、吸水作用により約2週間でゴムが膨張して嵌合部(かんごうぶ)を埋め、遮水を実現する。さらにその上の海中と気中の部分にはシリコンを注入し、矢板嵌合部のすべての遮水を完成させた。

その後、遮水鋼矢板の処理場側には、鉛直遮水シートを設置し、鋼矢板の保護を図っている。ステンレスのメッシュが入ったこのシートには、予め工場で鋼矢板の形状を記憶させ、速やかかつ的確に設置できるように工夫が施されている。

鉛直遮水シート設置の様子

  • 1. シート吊り上げ
  • 2. シート固定
    3. シリコン注入後の嵌合部

現場のアイデアで採用した5層構造シートが工期短縮に貢献。

側面のうち、法面の遮水にも、独特の工夫が活きている。法面には将来的に杭を打つことがないためクレイガードは採用せず、二重遮水シートを敷設し、その上に転炉スラグを投入した。

この二重遮水シートは、表と裏、そして2枚のシートの間に合計3層の不織布シートが保護用に使われており、実際は5層構造となっている。これは、現場と支店で検討を重ねて開発した特注のシート。単に遮水精度を高めるだけでなく、法面に埋設するにあたって作業効率面で大きなメリットをもたらす。

5層構造のシートの端を接合すれば、シートは海上に浮く。そして、上下端を接合すればシートは海上に浮く。そして、上下端を切断するとシート間に水が入り、自然と海中へ沈んでいく。施工において、その原理を利用した。

まずは工場で作った2m×45mの5層構造シートを全天候型に改良した溶着台船上にて15本接合し、30m×40mのユニットにして浮かべる。それを海上で溶接し、法面全体を覆う巨大なシートが完成したら、上下端の溶着箇所を切断して海中に沈めるというもの。通常の施工では、シートを2層と3層に分割して埋設しなければならなかったが、この方法を採用したことで短時間での沈設が実現でき、工期を大幅に短縮することができた。これは、現場スタッフのアイデアから生まれ、当現場で初めて採用された工法である。

井上は、「今までの実績をもとに新しい提案を行っていくのは、大切なこと。この現場には経験豊かなエキスパートが集まり、彼らが一体感を持って作業にあたってくれたので、新たな工法を駆使し、着実に工事を進めることができました」と語る。

クレイガードを施行したエリアは、すでに作業船などの往来のための開口部が締められ、現在、護岸の北東部に設けられた水処理施設の建設工事が順調に進んでいる。

5層構造シートの敷設の様子

技術研究所
土木技術グループ 地盤チーム
部長 山田 耕一

時代性と経済性を兼ね備えた技術―クレイガード工法―
寒川東部臨海土地造成工事では、産業廃棄物最終処理場の底面遮水工にクレイガード工法が採用されましたが、土壌浄化対策としても非常に効果的な役割を発揮します。
例えば、汚染土壌があるとすれば、その周囲を掘削し、クレイガードを注入することで鉛直遮水壁を形成し、高い遮水性能を維持することができます。もちろん、鋼管矢板を打ち込んだり、連続地中壁で汚染土壌を囲う方法もありますが、クレイガードなら錆びたり、割れる心配はありません。
リサイクル浚渫土を活用し、次世代の人々へ安心した場所を提供するクレイガード工法。この技術は、経済的であるだけでなく、時代の要請である環境に配慮した技術でもあります。地球規模で環境保全が提唱されている中、廃棄物削減や汚染土壌への取り組みも世界各地で進んでいくことと思われます。
工事名称 寒川東部臨海土地造成工事
発注者 愛媛県四国中央市
施工者 五洋・東洋・井原特定建設工事共同企業体
工期 2004.3.16〜2008.3.21
工事場所 四国中央市寒川町・具定町地先
工事概要 管理型廃棄物処分場 11ha・140万m3
安定型廃棄物処分場 8.4ha・4万m3
再開発用地、親水緑地、緩衝緑地用地の造成


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