

貨物船や客船が引きも切らず行き交う交通の要衝、エジプトのスエズ運河。パナマ運河と並ぶ世界二大運河です。レセップスが切り拓いたスエズ運河の大改修工事を、20年にわたり完遂したのが五洋建設です。

1950年代に入り、当社は海外展開を重点戦略に掲げ、1957年にはインド・ゴアの岸壁築造に技術指導団を派遣します。続いて訪れたビッグチャンスが、スエズ運河改修工事の国際入札への参加要請でした。すでに海洋土木では国内トップ企業の地位を確立していた当社に、日本政府から国際入札への参加要請があったのです。1961年、世界の並み居るコントラクターを相手に当社は見事受注に成功します。しかし喜びも束の間、そこからスエズ苦闘の工事が始まります。
日本より遠く地球の反対側スエズの地での運河改修工事は、想像を遙かに越える困難の連続となりました。気候・生活・文化・習慣の違いに加え、速い潮流、行き交う大型船団による頻繁な工事の中断、さらには工事の行く手を阻むかのように海底に横たわるコンクリートの5倍以上の高硬度の岩盤などです。
さらに最悪の事態が起こります。1967年に勃発した第三次中東戦争です。工事は完全にストップし、再開もままならぬまま、1973年には追い打ちをかけるように第四次中東戦争が起こります。このときはアラブ側の抵抗が激しく、スエズ運河には数千発の不発弾や船舶が沈められ、運河は完全に機能停止状態に追い込まれます。

ところがその間も、当社の社員は現地に留まり続け、エジプト政府に何度となく足を運び、工事の再開を粘り強く交渉したのです。そして遂に工事再開が決定され、当社は競争なしの特命工事でプロジェクトを受注したのです。工事中断より8年が経過した1975年のことでした。
四期にわたるスエズ運河改修工事は、1980年に完成します。1961年の第一期改修工事の開始から、実に20年の歳月が経っていました。この難工事、それもスエズ運河という世界的にも意義ある工事を完成させた五洋建設の名は、国際社会で大いに高まることになります。そして、何よりも私たちが得たものがありました。
「Never Give Up !」
最後まで諦めないというプロジェクトに対する強い使命感、すなわち仕事に対する誇りを持つことでした。私たち五洋を知る上で、ぜひ知っておいていただきたい熱いメッセージです。
五洋建設にとってスエズが西のビッグプロジェクトなら、東のビッグプロジェクトはシンガポールが舞台です。当社とシンガポールの関係は1964年に始まり、40年を経た今日でもなお続いています。では、当社とシンガポールの関係をお話ししましょう。

1965年に英国から独立したシンガポールは、淡路島ほどの限られた国土の中で、政府主導により徹底した外資導入による産業拡大と住宅整備政策、そして国土開発事業を軸に発展を続けています。とりわけ産業基盤を整備するためには、海上を埋め立て国土を拡張し、石油化学コンビナートや港湾施設、空港を建設することが急務でした。1964年、ジュロン造船ドッグおよび岸壁建設工事を受注することによって、その後当社にとって、東南アジアでの一大マーケットになるシンガポールでの活動が始まります。
なかでもスエズ運河に次ぐ大型工事として、またシンガポールでの飛躍の鍵となった工事が、「チュアス埋立工事」です。埋立造成工事としては、世界最大規模といえ、1984年、約700億円という超大型案件をシンガポール・ジュロンタウン公社から単独受注しました。この他、世界の空港施設の中でも高い評価を受ける「チャンギー国際空港」の埋立工事も当社です。
シンガポールの国土は、約22%が埋立によるものですが、その内の約40%、結果的には国土の約10%が当社の浚渫工事によって作られたものです。さらには、地下鉄工事やコンテナターミナルなど、国造りに欠かせないインフラ整備に関する数多くのプロジェクトを手掛けています。
シンガポールへの貢献は土木だけではありません。建築分野では1983年には「シム・リム・スクエア・ビル」という当社として海外初の大型商業ビルを受注したのを皮切りに、ダウンタウンではオフィスビル「ウィーロックプレイスビル」、住宅施設でも大型コンドミニアム「チルタンパークコンドミニアム」など、当社の建築技術は海洋土木技術とならび、シンガポールで高い評価を受けるようになりました。
そしてシンガポールでの当社の建築技術の名を後世に残す物件が2002年に完成します。複合文化施設「エスプラネードシアターズ・オン・ザ・ベイ」です。政府が「アジアの芸術の拠点を」と30年にわたる構想を経て、当社が受注し完成させた物件です。現在、シンガポールの観光スポットになるほどデザイン性にも優れており、ドリアンをイメージした先端的な外観など、皆さんも機会があればぜひご覧頂ければと思います。

また、東京でいえば銀座に相当する繁華街、地下鉄オーチャード駅の真上に、最高高さ218mの超高層マンションと商業施設を兼ね備えた複合施設を完成させました。2011年にはマリーナ湾地区複合リゾート開発の一環として「アートサイエンス・ミュージアム」を当社が過去に埋立造成を行った場所に建設するなど、五洋建設の海洋土木技術が国土のインフラ整備を担い、建築技術が都市文化を構築することで、シンガポールの国造りに深く関与し貢献しています。五洋建設とシンガポールの45年を越える信頼に基づく交流は、今後もまだまだ続けていく予定です。