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What's New

現地材料を用いる海洋コンクリートの開発
〜海水・海砂を用いた自己充てんコンクリート(SALSEC)〜

2011年10月19日

早稲田大学、五洋建設株式会社、東亜建設工業株式会社、東洋建設株式会社は、真水などの使用材料の調達や作業員確保が困難な海洋環境での施工に対応した「海水・海砂を用いた自己充てんコンクリート(SALSEC(ソルセック):Salt Self Compacting Concrete)」を、早稲田大学清宮教授の指導のもと開発しました。

今回の東北地方太平洋沖地震により、陸・海路など輸送手段への大きな被害を受けた東北沿岸地域での緊急復旧工事では、材料調達や作業員の確保が課題となっています。また、国内外の離島部・沿岸部での建設工事においても、陸上・海上アクセスが悪く、真水や骨材などの材料調達や建設労働者を確保することが困難な地域もあります。さらに海外工事に目を向けると、長距離運搬の必要性や淡水化プラントに費用がかかることなどが、中近東などの建設現場で 課題となっています。

今回開発したコンクリートは、練混ぜ水に海水、細骨材に除塩しない海砂を使用し、特殊な混和剤により、普通コンクリートと同様な材料のみで自己充てん性を実現しました。これにより津波で海水に浸かった砂や骨材、あるいは廃棄処分の対象となったコンクリートから製造した再生骨材も除塩することなく使用可能となり、今回の震災の廃棄物処分にも役立つと考えています。また、真水の取得が困難な離島、乾燥地帯などの建設場所で現地のものを使う「地産地消」の考え方に基づいた環境にやさしいコンクリートでもあります。

海水を用いたコンクリートはかつて離島などで軍用に多く使用されてきました。良い施工で出来た海水使用コンクリートは長年経ても強度や品質は現在でも十分です。消波ブロック、根固めコンクリートなどの無筋コンクリートでは海水・海砂への使用は問題ありません。近年のコンクリートの劣化問題と関連して、鉄筋コンクリートでは鋼材防食の観点から海水や除塩しない海砂の使用は制限されました。しかし、近年、高い防食性を有したステンレス鉄筋などが開発され、厳しい腐食条件下でも高い耐久性を有する鉄筋コンクリート構造物の実用化が図られました。ステンレス鉄筋を使用することで海水や除塩しない海砂を用いた鉄筋コンクリート構造物の製作が可能となりました。

また、今回の共同研究では、海水や海砂中の塩分の影響を受けにくく、除塩しない海砂のような品質の劣る骨材でも高い減水効果が発揮できる特殊な混和剤を使用して、自己充てんコンクリートを実現しました。

「海水・海砂を用いた自己充てんコンクリート(SALSEC)」の特徴は以下のとおりです。

1.現地材料で製造可能 −地産地消・環境にやさしいコンクリート−
一液型の特殊な混和剤を使用することで、沿岸部で調達が容易な海水・海砂を利用して、自己充てん性を有したコンクリートが製造可能となりました。一般的な自己充てんコンクリートでは、高性能AE減水剤とは別に石灰石微粉末や増粘剤を添加する必要がありますが、これらを今回使用しません(表-1参照)。
できる限り材料を現地調達することで、材料の運搬量を少なくしかつ輸送時に発生するCO2の削減が図れます。

2.低粘性で優れた流動性を保有 −工期短縮・省力化−
「SALSEC」は、セメント量380〜450kg/m3程度、特殊な混和剤を使用し、材料分離することなく、低粘性で優れた流動性をもつ締固め不要の自己充てんコンクリート(図-1参照)です。低粘性で変形速度が速い優れた流動性(図-2参照)を持つので、これまでの高流動コンクリートの問題点とされていたポンプ圧送性が改善され、施工の急速化が図れます。
これらの特徴により、工期短縮や打込み作業の省力化を実現し、施工でのトータルコストの低減が図れます。

3.過酷環境下で高い品質安定性と高耐久性を確保 −管理の省力化・高耐久化−
これまでの高流動コンクリートは、環境温度の変化や製造時の材料品質(表面水率など)の変動に敏感で品質管理に多大な労力を要していましたが、「SALSEC」はこれらの変動の影響をほとんど受けず品質が安定したコンクリート(図-3参照)ですので、気温30℃以上の高温地域での施工においても品質管理の省力化が図れます。
また、鉄筋コンクリート構造物においては、ステンレス鉄筋を用いることを標準としますので、飛来塩分の多い厳しい自然環境においても100年以上の耐久性を確保できます。

なお、今後は低強度から高強度のコンクリートまでを対象とした適用範囲の拡大を図ると共に、製造、打設、管理までの施工システムの構築を目指します。また、長期耐久性を確認するため促進試験と暴露試験を予定しております。
今後、国内外での材料や建設労働者の調達確保が難しい緊急復旧工事や輸送アクセスの悪い沿岸部や離島部でのインフラ整備を対象に本コンクリートの活用を図っていく方針です。

※お問い合わせ先
早稲田大学 創造理工学部 社会環境工学科教授 清宮理
東京都新宿区大久保3-4-1
TEL:03-5286-3852

または

五洋建設株式会社 技術研究所 内藤英晴
栃木県那須塩原市四区町1534-1
TEL:0287-39-2109

【参考資料】

配合例


「SALSEC」の充てん性能


「SALSEC(陸砂)と従来の増粘剤系高動流動コンクリートの比較


「SALSEC(陸砂)と従来の増粘剤系高動流動コンクリートの比較



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