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生物共生護岸の創造技術を確立 実海域の実証実験で確認
〜実海域の実証実験で生息生物の多様性を確認、水質浄化効果に期待〜

2006年02月15日

五洋建設株式会社(社長:鉄村和二郎)は、桟橋や護岸下部の日陰でも多様な生物が生息でき、周辺水質を浄化する「生物共生護岸」の創造技術をこのほど確立し、千葉県市川市の海域で実施中の護岸実験で効果を確認しました。今後は港湾構造物のリニューアルに向け、当技術を積極的に提案してまいります。

生物共生護岸イメージ生物共生護岸イメージ

沿岸域では、これまでその多くが鋼矢板の直立護岸方式で整備されてきましたが、自然環境回復の観点から、生物生息や生産、水質浄化機能などを持つ生物との共生に配慮した護岸整備が求められています。水生植物や水生生物の生育・生息の場を確保するための護岸構造様式には、所々に潮だまりや泥だまりを配した捨石による築堤や、生物や水、空気が出入りするための隙間や植栽スペース、干潟機能などを持つブロックタイプがあります。当社が確立した生物共生護岸の機能は以下のとおりで、3タイプの護岸構造様式があります。

生物共生機能

  • 生物生息機能:地形や潮汐等に応じた様々な生物の生息域を提供します。
    • 波・流れの穏やかな場所がつくられ、静穏な場所を好む生物が生育可能となります。
    • 干潮時も水が保持され、乾燥に弱い生物、急な温度変化に弱い生物でも生息可能となります。
    • 表面積の広い場所がつくられ、付着生物にとっては付着しやすくなります。
  • 水質浄化機能:付着性の海生生物は水質浄化機能があります。
    • 懸濁物質の濾過
    • バクテリア分解
    • 食物連鎖を通じた有機物から無機物への自浄作用
  • 生物生産機能:静穏な場所で生物生産を支えます。
    • ヨシや付着藻類等の光合成による栄養が、付着生物を育みます。
    • 稚魚の餌場として利用されます。

構造上の付加価値

  • 老朽化した既設鋼矢板護岸の耐久性が向上します。
  • 自然とふれあいやすい護岸で親水性が向上します。
  • 護岸の景観が向上します。

構造上の付加価値

捨石築堤タイプ生物共生護捨石築堤タイプ生物共生護

捨石築堤タイプ生物共生護岸:
既設の鋼矢板護岸前面に捨石で階段状に築堤し、岸側にはヨシを植栽し、所々にミニ人工干潟やタイドプール(潮だまり)、磯場を配置する形状です。

捨石築堤タイプ親水性生物共生護岸捨石築堤タイプ親水性生物共生護岸

捨石築堤タイプ親水性生物共生護岸:
捨石築堤にあたり、人が入れるような場所 を用意し、より親水性を増した形状です。

ブロックタイプ生物共生護岸ブロックタイプ生物共生護岸

ブロックタイプ生物共生護岸:
プレキャストブロックを用いて築堤します。捨石に比べ急勾配にでき、水域占用範囲に制限がある場合に有効な形状です。

一般に、夏場は海底酸素が減りやすいため、海底に生息す るカレイやハゼなどにとっては不都合です。生物共生護岸であれば、階段状の構造が浅場の役割を果たし、貧酸素時の魚のシェルターともなります。また、桟橋 や護岸下部は急深なので、酸素濃度の低い深部で付着性の海生生物が脱落してしまうと、水質浄化機能を果たせなくなってしまいます。階段状の生物共生護岸を 設置すれば深部での脱落が解消され、地盤高に応じた多様な生息環境を生み出すことができます。

当社は生物共生護岸技術の確立に向け、2004年4月から千葉県市川市千鳥町の当社機材センターに隣接する海域に専用実験場(約300・)を設け、階段状 の鋼製棚(奥行き6m、幅9m、高低差1.5m)を設置するとともに、海域に接する既存護岸にはパネル状の構造物を配置し、実験構造物として生物分布調査 を続けてきました。
このうち、階段状の鋼製棚では浅場とタイドプールを想定した実験のほか、屋根を設けた遮光条件下での生物分布についても調査を行なっています。また、棚の内部を石積み・石積みタイドプール・ポーラスブロック※付タイドプールに区分し、材料による付着状況も調べています。

※ポーラスブロック:硬化ポリエチレン・ポリプロピレン材料を網状に編みこんで円筒形に成形した製品

設置1年半経過後の生物生息状況を調査したところ、鋼製棚と護岸パネルには、既存護岸でみられたマガキ、タテジマフジツボ等の生物に加え、マハゼやサヨリの稚魚、カニ類やヨコエビ類、ユウレイボヤ、カンザイシゴカイなど、既存護岸で確認されなかった生物の生息も確認されました。生物共生護岸の設置でタイドプールや石積み、日陰など多様な空間が新たに生まれ、生物の生息環境が整ったことによるものです。

  • マハゼの稚魚マハゼの稚魚
  • カンザシゴカイカンザシゴカイ
  • ケフサイソガニケフサイソガニ
  • 実験構造物実験構造物
  • 構造物内部構造物内部

当社は実験中の生物生息状況モニタリングを2006年度も継続する予定で、その効果を引き続き確認していきながら、耐震強化予定の岸壁や桟橋、船舶大型化に対応した岸壁増深など、港湾構造物のリニューアルに向けて環境に配慮した本技術を積極的に提案してまいります。



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