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What's New

港湾の長周期波対策構造物を開発
〜長周期波の反射波を消波して港湾荷役作業への影響を回避〜

2004年09月30日

五洋建設株式会社 (社長:加藤秀明)は、港湾荷役作業に影響を及ぼさないよう長周期波の港湾内反射波を消波する 「長周期波の反射波消波構造物」を開発し、このほど水理模型実験を行なって消波性能を確認するとともに、港湾荷役作業効率の向上に有効であることを確認しました。当社は本消波構造物を“長周期波対策検討システム”のメニューに加え、長周期波の影響評価から対策工の提案、効果評価まで行なう総合技術提案に活用してまいります。

開発の背景

長周期波は、風波やうねりといった通常の波とともに存在する周期1分程度の平均海面の変動です。通常の波の波高は数mにもなりますが、堤防や港内の岸壁にぶつかると反射した波の高さは小さくなります。一方、長周期波の波高は最大数十cmですが、通常の波に比べて波長が長いため、反射波が通常の波のように小さくはなりません。
この長周期波が港湾内に進入すると、港湾の形状や岸壁の位置によっては反射波で波高が増幅し、荷役のために係留している船舶に大きな動揺を発生させることがあります。これまでにも多くの港湾で荷役障害や係留索の切断事故などが引き起こされています。
長周期波の反射波は短い距離で消波されず、通常の消波ブロックなどを用いた消波構造物で消波する場合、百メートル以上の構造物幅が必要です。しかしながら、設置場所の制約やコストの問題から、長周期波の反射波を従来の構造物で消波することは困難であると考えられていました。
このような背景から、狭い構造物幅で効率的に長周期波の反射波を消波できる構造物の開発が望まれています。

構造物の消波性能について

長周期波対策の構造物で十分な消波性能があるとされるのは、反射率が0.8以下となる消波構造物です。これは、たとえば波高20cmの波が消波構造物に1回反射すると波高16cm以下(20cm×0.8)となる性能のことで、3回反射すると波高は約10cm以下(20cm×0.8×0.8×0.8)になります。 通常の消波ブロックなどを用いた消波構造物では、風波やうねりといった通常の波だと反射率は0.4程度となりますが、長周期波の場合の反射率は0.9以上にとどまります。

開発構造物の概要

本消波構造物の全体幅は60〜65mで、スリット壁、雑石で満たされた幅50m程度の透水室、有孔隔壁、幅10〜15mの遊水室で構成されています。消波構造物にぶつかった長周期波の反射波は、以下の3つの消波メカニズムで波高が低減されます。

  1. スリットによる流速場の乱れで反射波を低減
    消波構造物前面のスリット壁で流速場に乱れを生じさせ、反射波が低減します。
  2. 透水層の水の粘性で反射波を低減
    波が透水層内の雑石間を通過する際、水の粘性でエネルギーが損失し、反射波が低減します。
  3. 遊水室による水位調節機能で反射波を低減
    透水室と遊水室の間に設けた有孔隔壁が、海水の移動に時間差を生じさせます。この時間差効果により水位調節機能が働いて、反射波が低減します。

住民の避難時歩行速度については、水中歩行実験を行ない、浸水時の水深と流速が避難者の歩行速度にどのように影響を与えるかを検討し、その結果を避難パラメータ設定に活かしています。また、避難者モデルや地域性については、対象地域の住民へのアンケートなどを行なって条件設定をします。さらに、必要に応じて上記以外の避難パラメータをいくつも加えることができるので、津波浸水時の避難行動再現に適した高精度なシミュレーションを実現します。

陸上部の津波浸水予測結果と同時刻の住民避難状況の予測結果とを組み合わせて解析し、人的被害の量的予測を行ないます。これにより、津波災害時の住民避難上の課題を抽出できるので、人的被害の低減に向けたより現実的な避難計画の立案や、効果的な津波防護施設の整備のあり方、優先的に耐震補強を進めるべき施設の具体的な提示、あるいは緊急避難的ではあっても整備を進めるべき避難施設の検討・提案などを行うことができます。

<本消波構造物の構造>
本消波構造物の構造
(クリックで拡大)

<本消波構造物の適用例>
本消波構造物の適用例
(クリックで拡大)

開発構造物の性能について

水理模型実験で新開発の本消波構造物の消波性能を確認したところ、長周期波に対する反射率は0.7程度という高い消波性能を実現できることを確認しました。
また、港湾内に本消波構造物を設置した場合の係留船舶の動揺量の低減効果についても、モデル港湾への構造物設置を2ケース想定して波浪場計算を行ない、船舶係留位置を2箇所設けて船舶前後動と左右動の動揺計算から数値的検討を行なった結果、適切な位置に消波構造物を設置することで、何も対策を講じない場合と比べ20〜80%の動揺量の低減効果があることを確認しました。

今後の展開

本消波構造物は、港湾内の防波堤や荷役岸壁、遊歩道や緑地などを備えた護岸など、港湾内に進入した長周期波を反射するあらゆる場所に適用できます。今回の水理実験で性能確認ができたので、今後は実用化に向けコストや工期の検討を進めていくとともに、本消波構造物のさらなる性能の向上を目指した実験を行なってまいります。

なお、当社は長周期波評価モデル、係留船舶の動揺を考慮した荷役稼働率算定モデル、長周期波消波構造物消波性能評価モデルの3つのモデルで構成される数値解析システム「長周期波対策検討システム」を2003年6月に開発しています。本消波構造物を本システムのメニューの一つとして加え、長周期波による荷役障害などで困っている港湾などに向け、対象地点にあわせた長周期波対策の総合技術提案として活用してまいります。

以上



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