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What's New

桟橋RC上部工劣化進行予測モデルを構築
〜低コストで桟橋の将来予測、維持管理計画立案に活用可〜

2004年07月22日

五洋建設株式会社(社長 加藤 秀明)と東洋建設株式会社(社長 赤井 憲彦)は、塩害を受ける桟橋の鉄筋コンクリート上部工について、劣化状態の経年変化を外観目視調査の結果に基づいて簡易にかつ安価に予測できる「桟橋RC上部工劣化進行予測モデル」をこのほど共同構築しました。本モデルは港湾空港技術研究所(理事長 小和田 亮)が提案した手法をさらに発展させて構築したものです。

研究の背景

港湾施設の中でも重要な役割を担う桟橋は塩害を受けやすく、RC上部工に損傷が発生している事例が数多く見られます。海水からの塩分浸透によってコンクリート内部の鉄筋は腐食しやすく、耐久性と耐荷力の低下を招きます。
一般に劣化の進行予測は、塩化物イオンに関する拡散方程式を用いて、梁や床版など個々の部材ごとに予測する方法が利用されています。この手法で部材ごとの予測を行うためには,対象地点それぞれでの塩化物イオン量を測定する必要があります。しかし、構造物のすべての部材に対して塩化物イオン量測定を行うことは、精度を向上させますが費用面から行われていないのが現状です。また、桟橋施設全体の劣化状態の時間的な推移や傾向を予測するには繁雑で不向きといえます。
塩害を受けやすい桟橋下面を詳細に日常的に点検することは桟橋の管理者にとって労力、費用の面から困難です。したがって、桟橋を適切に維持管理するためには、簡便な外観の目視観察によって現況を把握し、その結果を基に劣化の進行を予測して適切な補修、補強を計画できるようにすることが望まれます。

本手法の手順

構築した予測手法は、外観目視調査から得られた桟橋施設全体の現状の劣化度割合を基に、確率論的手法を用いた劣化進行モデルを作成し、将来の劣化度割合を予測するものです。手順は次の通りです。

  1. 桟橋の目視調査結果に基づいて、梁や床版部材の劣化度を「港湾構造物の維持・補修マニュアル」に示されている劣化度0〜Vの6段階に分類します。劣化度評価は1部材単位ごとに、鉄筋の腐食・コンクリートのひび割れ・剥離・剥落といった項目について行います。
  2. それぞれの劣化部材が時間経過とともに遷移率をもって劣化が進行していくという概念から、劣化度分類した部材に遷移率を織り込み、劣化進行モデルを作成します。遷移率は、建設から15〜30年程度経過した実構造物(民間31施設、公共15施設)の外観調査結果を詳細に分析して算定しています。
  3. 劣化推移の予測結果をもとに、たとえば電気防食工法や断面修復工法で補修した場合のその後の劣化予測なども行ない、供用期間中で最適な今後の補修工法、補修時期を提案するとともに、ライフサイクルコストの算定を行います。

本手法の特長

  1. 手法は詳細な調査を行うことなく、外観調査結果だけから予測するものであるため、桟橋全体の将来予測を低コストで簡易に行えます。
  2. 測結果を基に補修時期や補修方法を設定すれば補修費用の算出も行えるため、最適な維持管理計画を立案する際に有効に活用できます。
  3. 本手法は港湾空港技術研究所が考案した手法を発展させ、個々の桟橋の劣化進行に適するように遷移率を各劣化度毎に設定したものです。複数回の劣化調査を行っている桟橋のデータを用いて、今回構築した劣化進行予測手法の有効性を確認しています。

本手法の構築を機に、五洋建設と東洋建設の2社はそれぞれのエンジニアリング分野で活用していくとともに、港湾管理者や民間の桟橋所有者などに対しても維持管理計画の立案に有用な手法であるとして、積極的に採用を提案していく予定です。

参考

1)塩化物イオンに関する拡散方程式とそれを用いた劣化予測の課題について

鉄筋コンクリート構造物の鉄筋腐食は、塩化物イオンが鉄筋の不動態被膜を破壊することによって始まるとされ、塩化物イオンが鉄筋位置で発錆限界に至るまでの期間を予測する方法として、一般的にはフィックの拡散方程式というが用いられています。その際、入力パラメータとして表面塩化物イオン濃度、みかけの拡散係数が必要ですが、環境条件やコンクリート品質によって、ひとつのコンクリート構造物であっても部分部分で数値は大きく異なります。そのため、ある任意の点での塩化物イオンの拡散予測は可能ですが,コンクリート構造物全体を予測するには各部材の表面塩化物イオン濃度分布を知る必要があり、現実は費用面から実現が困難です。
また、一般には鉄筋位置での塩化物イオン濃度が1.2kg/m 3 になると発錆するとされていることから、その時点までの予測は行われていますが、劣化が進行した段階では鉄筋の腐食は様々な環境要因に左右されることから、加速期や劣化期の予測方法についても明確になっていない状況にあります。

2)劣化進行予測の手順および予測例

  1. 部材別劣化度判定結果の例
  2. 調査実測値と劣化進行予測値との照査
  3. 劣化進行予測結果の活用方法


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