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三保L型突堤工事(名古屋支店)

※L型突堤完成イメージパース

三保松原 〜富士山世界文化遺産の構成資産〜

2013年6月に富士山世界文化遺産の構成資産に登録された三保松原は、雄大な富士山を背に松林の緑と打ち寄せる白波、海の青さが織りなす白砂青松の風景が古くから絵画や和歌に表現され、日本人の心に刻まれてきた。三保松原の砂浜は安倍川から流れ出た砂によって形成されてきたが、高度経済成長期に安倍川で大量の砂利を採取したことで土砂の供給が減少し、波によって砂浜が削られ一時消失の危機に瀕した。
これまで、テトラポッドなどの消波ブロック堤や、サンドリサイクル養浜などにより海岸侵食対策を実施してきたが、2013年の世界文化遺産の登録過程において、海面から大きく突き出たテトラポッドの群れが世界文化遺産の風景として相応しくないと指摘された。これを受けて、既設の消波堤に替わり景観に配慮した突堤を新たに設置し、養浜と組み合わせて景観保護と地域防災のために必要な浜幅への回復を図ることとなり、突堤には低天端構造で波浪に対する安定性に優れた当社の特許工法であるS-VHS工法が採用された。

  • 現場位置図現場位置図
  • 事業の概要事業の概要

L型突堤の特徴

突堤の概要突堤の概要(画像拡大)

堆砂模型実験堆砂模型実験(画像拡大)

当社が施工する突堤は沖合約100mに海岸線と並行に伸びる横堤と、海岸線から横堤へ伸びる縦堤からなる。横堤には厳しい波浪条件下での耐久性と景観に配慮した低天端構造が求められ、当社の特許工法であるS-VHS工法を適用したケーソン9函が採用された。一方、縦堤には堆砂性能や地形変化への追従性が現地で確認されている被覆ブロック傾斜堤が採用された。また、横堤と縦堤の接続部には当社が高度技術提案した杭式スリットケーソンである接続堤が採用された。
養浜事業と組み合わせた際のL型突堤の堆砂性能については、3Dプリンターで作った精巧な模型を用いて当社技術研究所の大型平面水槽で堆砂模型実験を行い、その性能を確認した。

当社の特許技術「S-VHS工法」

S-VHSガイド管S-VHSガイド管

ケーソン製作全景ケーソン製作全景

横提9函と接続提1函製作完了横提9函と接続提1函製作完了

ガイド管底の据付誘導鋼製プレートガイド管底の据付誘導鋼製プレート

S-VHS工法は鉄筋コンクリート製のスリットケーソンと鋼管杭の基礎からなる有脚式スリットケーソン工法である。ケーソンの前面上部は斜面形状であり、この斜面がケーソンに作用する波力を分散させケーソンを安定させるとともに、波が斜面にあたり越波することで波が砕けてそのエネルギーが消散する。また、波浪の透過性を高めるために全体にスリットを配置しており、波がスリットからケーソン内部に入って渦を巻くことで波のエネルギーが減衰し、ケーソン背後に静穏域を創り出すことができる。
L型突堤を設置する駿河湾は日本でも有数の急峻な海底地形のため、勢いのある波がそのままに押し寄せる。そのため、設計ならびに施工の条件が非常に厳しく、横堤の設計波浪は波高約15m、周期17秒となり、非常に厳しい波力が横堤に作用する。さらに、波浪により巻き上がる海底の土砂が横堤に激しく衝突してコンクリートや鋼管杭が磨耗する。この現地条件に耐えるため、鋼管杭は直径1,200〜1,300mm、厚さ19〜25mm、長さ23.8〜45.8mという長大なサイズとなった。また、磨耗を考慮したケーソンのコンクリートのかぶり厚は最大で255mmとなった。
施工はケーソンを製作する陸上施工と鋼管杭打設およびケーソン据付けの海上施工に分かれる。当工法ではガイド管と呼ぶ管径が杭より300mm大きな鋼管をケーソン製作時に内部に仕込む。このガイド管には施工上の工夫が2つある。1つ目はガイド管の底に取り付けた据付誘導鋼製プレートであり、これによりケーソンのスムーズな据付を実現する。2つ目は杭をガイド管の中心へ誘導するガイド管内側に取り付けた鋼製スペーサであり、これにより杭とガイド管の隙間を充填するグラウトの厚みが均一となり、ケーソンに作用する波力を杭にムラなく伝達して耐波浪安定性を確保できる。

岩のように固い砂礫地盤への杭打ち

ハーフセップ台船による鋼管杭打設ハーフセップ台船による鋼管杭打設

ケーソンを鋼管杭に挿し込むためには鋼管杭の相対位置と高さの高精度な打設管理が求められる。また同時に、波力に耐えるだけの杭の根入れが必要となる。現地は換算N値が150を超える岩のように固い砂礫地盤ゆえ、ハンマだけでは必要な支持力を確保できる深度約35mまで打込めない。
そのため所定の深度までバイブロハンマと地盤を高圧噴射水でほぐすウォータージェット工法を併用して、1本の杭を約3時間かけて打込み、さらに油圧ハンマのみで約1時間かけて支持層に3〜4m打込む。1本の杭打ちが最長で約4時間となるが、海象条件が施工に影響して高圧水の噴射を途中で止めると、杭先端の噴射ノズルが砂で閉塞して、杭を最後まで打設できなくなる大きなリスクがあるため、4本のスパッドで船体を固定するハーフセップ台船を使用して波浪の影響を最小限に抑え、高精度・高品質な杭打ちを実現した。

  • 杭先端高圧水噴射ノズル杭先端高圧水噴射ノズル
  • バイブロハンマとウォータージェットの併用バイブロハンマとウォータージェットの併用
  • 油圧ハンマによる支持層打込み油圧ハンマによる支持層打込み

海上施工で見えない鋼管杭へのケーソン据付け

大型起重機船によるケーソン据付け大型起重機船によるケーソン据付け

ケーソンの据付けは、2018年の1月半ばより開始した。ケーソンの重量は最大で約730tになるため、1,400t吊の起重機船を使用し、1日1函ずつ据付けた。
起重機船の動揺でケーソンが揺れ動いて鋼管杭に接触し、鋼管杭が曲るなどの損傷によりケーソンを鋼管杭に挿し込めなくなるリスクがあった。また、ケーソン前面が斜面構造のため、沖側の鋼管杭は陸側に比べて海底からの突出が短く水没しており、ダイバーの誘導なしでは据付けできない。波や風が厳しい作業条件下では作業員が揺れるケーソンや吊具に接触するリスクもあった。そこで、毎日夜明け前に当日の海象条件を当社の気海象情報配信システムの予測結果と現地海域の状況から推定し、作業の可否を慎重かつ適切に判断した。これらの対応と、ケーソンを鋼管杭へ挿し込む際のガイド管底の据付誘導鋼製プレートが効果的に作用し、スムーズかつ安全に据付けることができた。
その結果、2018年2月半ばに横堤9函と接続堤1函のケーソン全10函の据付けを完了した。

  • 岸壁からのケーソン浜出し岸壁からのケーソン浜出し
  • ガイド管底の据付誘導鋼製プレートガイド管底の据付誘導鋼製プレート
  • ケーソン据付け完了ケーソン据付け完了

L型突堤の完成を目指して

2018年4月から縦堤の被覆ブロックを三保半島で製作し、同年の秋から2019年2月にかけてブロックを海岸に据付ける。2019年3月、S-VHS工法による国内で初めての海岸防護と堆砂の効果を併せ持つL型突堤が完成の予定である。

  • 縦堤被覆ブロック縦堤被覆ブロック
  • L型突堤完成イメージパースL型突堤完成イメージパース

所長インタビュー

工事所長 土岡 真樹工事所長 土岡 真樹

世界文化遺産・富士山と三保松原の景観を守る取り組みに携われて光栄です。世界遺産の景観改善、高波から人命と住宅を守る地域防災の2つの目的を持った国内で初めての取り組みであり、観光地域づくりの一端へ寄与できると考えています。
この工事は当社の特許工法であるS-VHS工法を用いた設計施工一括工事です。発注者である静岡県とは設計段階から打合せを重ねて工事を円滑に進めてきました。今回L型突堤に採用されたS-VHS工法は富山県下新川海岸と静岡県駿河海岸で離岸堤に適用されてきた実績があります。これまでに蓄積した経験と技術、知識と知恵をこの工事にフィードバックして高品質な土木構造物を作っています。
海上工事では、扱う船舶機械が大きいため、ひとたび災害が発生すると、社会に与える影響が大きくなることを職員、協力会社の方々が念頭に置き、当たり前のことを当たり前に行って、無事故無災害で竣工を迎えられるように一丸となって工事を進めていきます。
当工事は、少人数で現場の管理を行ってきました。そのため、職員一人ひとりが主体性と行動力を持って仕事ができることを意識して現場運営を行ってきました。特に、若手職員が、仕事をやらされるのではなく、自分で考えて仕事を全うし、達成感を実感できるように今後も取り組んでいきます。

工事名称 平成27年度[第27−K5002-01号]清水西海岸高潮対策事業
(防災・安全交付金)工事(L型突堤工)
施工場所 静岡県静岡市清水区三保地先
工期 2016年3月18日〜2019年3月15日
発注者 静岡県静岡土木事務所
施工者 五洋・鈴与特定建設工事共同企業体
工事概要 RC上部工製作・据付 10函(5,700〜7,200kN/函、縦堤延長86.6m、横堤延長=81.8m)
鋼管杭打設 42本(φ1,000〜1,300mm、L=19.8〜45.8m)
被覆ブロック製作・据付 ペルメックス 2〜32t型
港湾築堤マット等製作・据付 5〜10t型


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